Wagnerian

The InheritorWagnerian

「親父が勝てなかったダービーを、
君と。」

PROFILE

生誕2015.02.10
調教師友道康夫 (栗東)
主戦騎手福永祐一
通算成績17戦5勝 [5-1-2-9]
主な勝鞍東京優駿 (G1)
神戸新聞杯 (G2)
東京スポーツ杯2歳S (G3)
野路菊S (OP)

PEDIGREE

FATHER
ディープインパクト
(日本) 2002
サンデーサイレンス
ウインドインハーヘア
×
MOTHER
ミスアンコール
(日本) 2006
キングカメハメハ
ブロードアピール

父、母、そして祖父母に至るまで、全てがオーナー金子真人氏の所有馬という「金子血統」の結晶。サンデーサイレンス、キングカメハメハ、ブロードアピールの血が混ざり合い、日本競馬の粋を集めた究極の配合からこの英雄は生まれた。

CAREER RECORD

全レース成績

TOTAL: 17 RUNS5 - 1 - 2 - 9
DATERACE NAMECOURSE / DIST.JOCKEYRESULT
2021.11.28ジャパンカップ (G1)東京 / 芝2400m戸崎圭太18th
2021.10.23富士ステークス (G2)東京 / 芝1600m福永祐一6th
2021.04.04大阪杯 (G1)阪神 / 芝2000m吉田隼人12th
2021.02.14京都記念 (G2)阪神 / 芝2200m武豊5th
2020.06.28宝塚記念 (G1)阪神 / 芝2200m川田将雅13th
2020.04.05大阪杯 (G1)阪神 / 芝2000m福永祐一5th
2019.11.24ジャパンカップ (G1)東京 / 芝2400m川田将雅3rd
2019.10.27天皇賞・秋 (G1)東京 / 芝2000m福永祐一5th
2019.08.18札幌記念 (G2)札幌 / 芝2000m福永祐一4th
2019.03.31大阪杯 (G1)阪神 / 芝2000m福永祐一3rd
2018.09.23神戸新聞杯 (G2)阪神 / 芝2400m藤岡康太1st
2018.05.27日本ダービー (G1)東京 / 芝2400m福永祐一1st
2018.04.15皐月賞 (G1)中山 / 芝2000m福永祐一7th
2018.03.04弥生賞 (G2)中山 / 芝2000m福永祐一2nd
2017.11.19東京スポーツ杯2歳S (G3)東京 / 芝1800m福永祐一1st
2017.09.16野路菊ステークス (OP)阪神 / 芝1800m福永祐一1st
2017.07.162歳新馬中京 / 芝2000m福永祐一1st
CAREER HIGHLIGHTS

英雄の証明

01
New Horse Race
1-1
2017.07.16 / 中京 2000m

THE IMPACT

2歳新馬

伝説の幕開け。後にダービー馬となるヘンリーバローズとの叩き合い。中京の長い直線を、上がり32.6秒というコース史上最速の極限時計で突き抜けた。小柄な馬体に秘めた無限の可能性を、日本中のファンが確信した瞬間だった。

LAST 3F
32.6
RESULT
WIN
02
Japan Derby
17
2018.05.27 / 東京 2400m

DESTINY FULFILLED

第85回 東京優駿

「大外枠17番」という絶望的な数字を跳ね除け、福永祐一は先行策という勝負に出た。直線、逃げ粘るエポカドーロを猛追し、ゴール寸前で捉え切る。19度目の挑戦。福永家二代にわたる悲願が、ついに成就した歴史的一戦。

1着 ワグネリアン2着 エポカドーロ
03
Kobe Shimbun Hai
3-3
2018.09.23 / 阪神 2400m

TRUE STRENGTH

第66回 神戸新聞杯

主戦・福永の負傷欠場により、藤岡康太が急遽代打を務めた一戦。ダービー馬の誇りを胸に、外から力強く伸びて快勝。誰が乗っても強い、本物の実力を証明した。これがワグネリアンにとって生涯最後の勝利となった。

TIME
2:25.6
MARGIN
1/2
04
Japan Cup 2021
17
2021.11.28 / 東京 2400m

THE FINALE

第41回 ジャパンカップ

喘鳴症の手術、古馬となってからの苦闘。満身創痍で挑んだラストラン。結果は最下位18着。しかし、かつての輝きを取り戻そうと最後まで走り抜いたその姿は、多くのファンの胸を打った。数日後、彼は静かにその生涯を閉じることになる。

通算成績 17戦5勝
DATA ANALYTICS

衝撃の
上がり最速

新馬戦で記録した上がり3ハロン32.6秒。これは改修後の中京競馬場において当時の最速レコードであった。小柄な馬体ながら、ディープインパクト譲りの爆発的な加速力を持ち、特に左回りのコースで見せる末脚の切れ味は現役屈指の精度を誇った。

32.6s

COURSE RECORD

中京芝2000m 上がり3F

※2017 2歳新馬

DERBY WINNER STATS

8枠17番からの奇跡
WIN RATE FROM GATE 17VERY LOW
DIFFICULT
WAGNERIAN (DERBY)1st PLACE
HISTORY MAKER
FAVORITE (5th)12.5x
UNDERDOG
17年ぶりの8枠優勝
WAGNERIAN
“
ようやく福永洋一の息子として、
誇れる仕事ができた。
主戦騎手 福永祐一
日本ダービー勝利インタビューより
“
最悪だ、目の前が真っ暗になった。
(大外枠の抽選結果を見て)
調教師 友道康夫
ダービー枠順決定時の回想
FAN VOICES

ファンからの声

Y

福永騎手の涙、ウイニングランでのあの表情。あの場にいた全員が、福永家の悲願を知っていた。ワグネリアンが彼を真のダービージョッキーにしたんだ。

K

早すぎる別れが悲しすぎる。古馬になって苦しんでいたけど、いつも一生懸命走っていた。金子血統の結晶。彼の産駒を見たかったのが本音です。

S

乳母に育てられたワグネリアンが、日本競馬の頂点に。おとなしくて賢い子が、ターフで野獣のように伸びる姿。勇気をもらいました。

BEHIND THE SCENES

秘蔵エピソード

ダービー馬の称号の裏側に隠された、繊細で数奇な物語

01

乳母に育てられた「健康優良児」

祖母ブロードアピール、母ミスアンコール共に授乳を嫌う傾向があり、ワグネリアンは乳母の手で育てられた。しかし育成牧場では「何でも一回で覚える」と評されるほどの知能と、小柄ながら抜群の健康体を誇る優等生だった。その賢さが、後にダービーで見せた「折り合い」の技術へと繋がっていく。

02

2001勝目の奇跡

2017年7月、福永祐一はキセキでJRA通算2000勝を達成。その直後のインタビューで「次なる目標は?」と問われ「ダービー」と答えた。そのわずか1日後、新馬戦のワグネリアンに跨り2001勝目を挙げた。まさにダービーへの物語は、彼との出会いから再始動したのである。

Danon Premium
THE ARCHRIVAL
DESTINY

DANON PREMIUM

ダノンプレミアム

2018年クラシック戦線、ワグネリアンの前に立ち塞がった最強のライバル。弥生賞での対決では、完璧な内容でダノンプレミアムが勝利。その圧倒的な実力差に、一度は絶望すら漂った。

しかし運命はダービーで暗転する。怪我を乗り越え絶好の1枠1番を引いたダノンプレミアムに対し、大外17番のワグネリアン。誰もがダノン優勢を信じたが、進路を阻まれた王者と、活路を切り開いた天才。交差した一瞬の明暗が、ダービーの歴史を書き換えた。

2018東京優駿
1stワグネリアン
vs
6thダノンプレミアム

福永家の悲願を背負って

福永家の悲願を背負って

競馬界には「ダービーに愛される」という言葉がある。どんなに名手であっても、どんなに名馬であっても、このレースだけは実力以外の何かが微笑まなければ勝てないと言われる。福永祐一にとって、それはあまりにも重く、遠い言葉だった。かつて「天才」と謳われた父・洋一氏が一度も手にすることができなかった栄冠。その背中を追って騎手となった祐一の前に現れたのが、ワグネリアンだった。

大外17番、絶望からの賭け

2018年5月27日、運命の日。ワグネリアンが引き当てたのは、統計的に最も勝利から遠いとされる8枠17番。馬主である金子真人氏、そして調教師の友道氏は絶望した。しかし、福永祐一だけは諦めていなかった。「惨敗のリスクを負ってでも、前に行く」。それはこれまでの自身のスタイルを捨て、馬の精神力を信じ抜く究極の選択だった。大外から鋭く飛び出し、内側に潜り込む。その刹那の判断が、17年間に及ぶ8枠のジンクスを打ち破る楔となった。

亡き父へ捧げるウイニングラン

直線の叩き合い、エポカドーロとの差が半馬身に縮まった瞬間、時が止まったように見えた。福永の右ムチに応え、ワグネリアンがもう一段ギアを上げる。ゴールを駆け抜けたとき、福永は初めて「自分自身の成し遂げたこと」で涙を流した。これまでは伝説の父と比較され続け、その重圧に耐えてきた。だがこの日、彼は「福永洋一の息子」ではなく、一人の「ダービージョッキー・福永祐一」として歴史に刻まれたのである。

謎の死、そして伝説へ

しかし、神様は残酷な結末を用意していた。古馬になってから喉の疾患に苦しみ、勝ち星から見放されながらも現役を続けたワグネリアンを、突如として病魔が襲う。2022年1月5日。死因は胆石による多臓器不全。馬には極めて珍しい、前例のない最期だった。産駒を残すことなく去ってしまった英雄。だが、彼が東京のターフで見せたあの黄金の輝きと、福永祐一の手を引いて頂点へと導いた勇姿は、日本競馬が続く限り語り継がれていく。一頭の馬が、一人の男の人生を変えた。その奇跡の物語の名を、私たちはワグネリアンと呼ぶ。

「彼は僕の人生を変えてくれた。ダービーの後、何も返せなかったことが本当に心残りだ」
――C.福永祐一