サリオス - 三冠馬を追い詰めた怪物の記録
Salios

The Heavyweight Salios

巨体から放たれる精密なスピード。
「もう一頭の天才」は、ターフに確かな熱狂を残した。

PROFILE

生誕2017.01.23
調教師堀宣行 (美浦)
主戦騎手松山弘平 / D.レーン
通算成績15戦5勝 [5-2-2-6]
主な勝鞍 朝日杯FS (G1)
毎日王冠 (G2) 2回制覇
サウジアラビアRC (G3)
皐月賞(G1) 2着、日本ダービー(G1) 2着

PEDIGREE

FATHER
ハーツクライ
(日本) 2001
サンデーサイレンス
アイリッシュダンス
×
MOTHER
サロミナ
(ドイツ) 2009
Lomitas
Saldentigerin

父はディープインパクトを破った有馬記念馬、母はドイツオークス馬という世界基準の配合。500kgを超える巨体はドイツ血統の底力とサンデーサイレンス系の瞬発力を凝縮した結晶であり、マイルからクラシックまで戦い抜くポテンシャルの源となった。

CAREER RECORD

全レース成績

TOTAL: 15 RUNS 5 - 2 - 2 - 6
DATERACE NAMECOURSE / DIST.JOCKEYRESULT
2022.11.20マイルチャンピオンシップ (G1)阪神 / 芝1600mR.ムーア14th
2022.10.09毎日王冠 (G2)東京 / 芝1800m松山弘平1st
2022.06.05安田記念 (G1)東京 / 芝1600mD.レーン3rd
2022.03.27高松宮記念 (G1)中京 / 芝1200m石橋脩15th
2021.12.12香港マイル (G1)沙田 / 芝1600mD.レーン3rd
2021.11.21マイルチャンピオンシップ (G1)阪神 / 芝1600m松山弘平6th
2021.06.06安田記念 (G1)東京 / 芝1600m松山弘平8th
2021.04.04大阪杯 (G1)阪神 / 芝2000m松山弘平5th
2020.11.22マイルチャンピオンシップ (G1)阪神 / 芝1600mM.デムーロ5th
2020.10.11毎日王冠 (G2)東京 / 芝1800mC.ルメール1st
2020.05.31日本ダービー (G1)東京 / 芝2400mD.レーン2nd
2020.04.19皐月賞 (G1)中山 / 芝2000mD.レーン2nd
2019.12.15朝日杯FS (G1)阪神 / 芝1600mR.ムーア1st
2019.10.05サウジアラビアRC (G3)東京 / 芝1600m石橋脩1st
2019.06.022歳新馬東京 / 芝1600mD.レーン1st
CAREER HIGHLIGHTS

不屈の歩み

01
Asahi Hai FS
3-6
2019.12.15 / 阪神 1600m

RECORD BREAKER

第71回 朝日杯FS

538kgという2歳G1史上最高体重での出走。重厚な馬体からは想像もつかない俊敏な加速で坂を駆け上がり、1分33秒0という驚愕のレコードタイムを叩き出した。ムーア騎手に「特別な馬」と言わしめた、無敵の2歳王者誕生の瞬間である。

TIME
1:33.0
WEIGHT
538kg
02
Tokyo Yushun
12
2020.05.31 / 東京 2400m

UNLUCKY GENIUS

第87回 日本ダービー

「相手が悪かった」としか言いようがない。皐月賞に続き、再び立ちふさがったのは三冠馬コントレイル。サリオスもまた歴史を塗り替えるレベルのパフォーマンスを見せたが、0.5秒差、届かなかった。無敗の二冠馬の背中を見続けた、誇り高き2着だった。

1着 コントレイル 2着 サリオス
03
Mainichi Okan
2-3
2022.10.09 / 東京 1800m

REBORN GIANT

第73回 毎日王冠

約2年もの間、勝利から遠ざかっていた怪物が、最も得意とする府中の1800mで真価を見せつけた。 1分44秒1。かつてのレコードを塗り替える激走で、オグリキャップ以来となる史上2頭目の毎日王冠連覇を達成。 「やはりサリオスは強い」――沈黙を破る地鳴りのような歓声が、府中の空に響き渡った。

TIME
1:44.1
RANK
1st
04
Hong Kong Mile
12
2021.12.12 / 沙田 1600m

GLOBAL CHALLENGE

香港マイル

日本国内での惜敗続きに終止符を打つべく、怪物は海を越えた。 香港の強豪を相手に、直線では自慢の巨体を揺らして猛追。 惜しくも3着に敗れたものの、その力強い走りは世界の競馬ファンに「日本の巨漢馬」の恐ろしさを強く印象づけた。

1着 ゴールデンシックスティ 3着 サリオス
DATA ANALYTICS

規格外の
ヘビーウェイト

サリオスを語る上で欠かせないのが、その圧倒的な馬格である。 朝日杯FSを制した際の馬体重538kgは、2歳G1における最高体重優勝記録。 一般的なサラブレッドが470kg前後であることを考えると、その筋肉の密度がいかに異常であるかが分かる。 「曲がれる重戦車」とも称されたその馬体こそが、彼の武器であり、ファンの愛した個性だった。

538kg

G1 RECORD WEIGHT

2歳G1最高体重優勝

※2019 朝日杯FS

WEIGHT COMPARISON

巨漢馬の証明
TYPICAL G1 WINNER 472kg
AVERAGE
SALIOS (G1 WIN) 538kg
G1 RECORD
MAX (PASTURE) 588kg
THE "COW" ZONE
推定馬格の差
SALIOS
凄く強い勝ち方だ。
彼はきっと、これからも特別な存在になる。
名手 R.ムーア
朝日杯FS 勝利後コメント
納得のいくものではない。
しかし、彼には次のステージが待っている。
調教師 堀宣行
香港での出走取消を受けて
FAN VOICES

ファンからの声

B

「牛」なんて呼ばれてたけど、走るときのあの迫力!毎日王冠での復活勝ちは震えました。 重戦車のような筋肉美はサリオスにしか出せない魅力です。

C

コントレイルさえいなければ、この馬が三冠を取っていたかもしれない。 「最強の2番手」という立ち位置が、かえってサリオスの切なさと強さを際立たせていました。

M

香港での引退、本当は最後に走る姿を見たかった。 でも無事に種牡馬になれて良かった。あの巨大な筋肉を子供たちに引き継いでほしい!

BEHIND THE SCENES

秘蔵エピソード

「牛」と呼ばれた巨漢馬の、愛らしくも切ない裏側

01

牧場公認の「牛」

サリオスの代名詞といえば、あまりにも巨大な馬体だ。 育成牧場のスタッフからも親しみを込めて「牛」と呼ばれていたエピソードは有名。 放牧中には最大588kgまで体重が増え、その体格は他のサラブレッドとは一線を画していた。 しかし、ひとたび走り出せば驚くほど器用で鋭い末脚を見せ、ファンはそのギャップに魅了されたのである。

02

異国での無念の抗議

引退レースとして選んだ香港マイル。しかし、現地の獣医師により無情の出走取消が下される。 堀調教師はJRAの獣医師と共に、数時間にわたって現地の判断に抗議を続けた。 「骨にも筋にも問題はない」――愛馬の最後をターフで飾らせてやりたいという、陣営の執念と愛情。 結局走ることは叶わなかったが、その絆はファンの心に強く刻まれた。

Contrail
THE DESTINY
ARCHRIVAL

CONTRAIL

コントレイル

サリオスのキャリアを語る際、決して避けては通れない壁。 それが無敗の三冠馬コントレイルだった。

2020年、皐月賞と日本ダービー。サリオスが繰り出した究極のパフォーマンスを、 コントレイルはいつもわずかな差で凌ぎ切った。 もし別の年に生まれていれば。もし彼がいなければ。 幾度となく繰り返されたその問いこそが、サリオスがいかに規格外の存在であったかを証明している。

共に時代を創り、共にターフを去った二頭。 コントレイルという光が強かったからこそ、サリオスという影もまた、深く濃く、美しく記憶されたのだ。

2020 東京優駿
2nd サリオス
vs
1st コントレイル

時代に翻弄された重戦車

時代に翻弄された重戦車

競馬の歴史には、勝利の数だけでは測れない名馬たちがいる。 サリオス。その名は、光り輝く栄光と、手の届かなかった至宝への渇望が入り混じった、切なくも美しい物語として記憶されている。 500kgを優に超える巨体でターフを揺らした彼は、まさに選ばれし者だけが持つ「怪物の血」を引くサラブレッドだった。

三冠馬の影で磨かれた牙

デビューから無傷の3連勝。朝日杯FSで叩き出したレコードは、彼が単なる「大きい馬」ではなく「速すぎる馬」であることを世界に知らしめた。 しかし、クラシックの舞台で彼を待っていたのは、無慈悲な運命だった。 コントレイル。空の境界を越えるような足取りで進む三冠馬の背中を、サリオスは必死に追い続けた。 皐月賞での0.1秒差。ダービーでの惜敗。 あと一歩、、指先が触れるほどの距離にありながら、決して掴めなかった「世代の頂点」。 その挫折こそが、サリオスという馬に「悲劇のヒーロー」としての深みを与えていった。

試行錯誤の果て、掴んだ意地

古馬になってからのサリオスは、自身の適性を探し求める流浪の旅のようでもあった。 陣営は彼のスピードを信じ、マイル、時には1200mという短距離への挑戦も厭わなかった。 惨敗に次ぐ惨敗。かつての王者の面影が薄れかけた時、彼は自身の聖地である府中の1800mに帰ってきた。 2022年、毎日王冠。2年前と同じ舞台で、彼は再びレコードを塗り替えて勝利する。 それは「俺を忘れるな」という、不屈の魂が叫んだ瞬間だった。 「牛」と呼ばれ、時に嘲笑さえ浴びたその重い体格を誇らしげに揺らし、彼は完全復活を遂げたのだ。

異国に消えた、最後の咆哮

引退の地として選んだ香港。しかし、神様は最後に残酷な脚本を用意していた。 出走取消。走ることさえ許されなかったラストラン。 抗議する陣営の姿と、馬房で静かに佇むサリオスの姿に、ファンは言葉を失った。 しかし、その不完全燃焼な終焉こそが、逆に彼の存在を永遠のものにしたのかもしれない。 「もし走っていたら――」その夢の続きは、今、彼によく似た巨体を持つ子供たちへと託されている。 最強のライバルの影で、誰よりも力強く生きた重戦車。 サリオスという名の熱狂は、これからも私たちの記憶の中で、決して色褪せることはない。

「サリオスは、最後までサリオスらしく戦い抜いた。その誇りを忘れないでほしい」
――競馬ファンの独り言

今、彼は種牡馬として、静かな日々を送っている。 かつてコントレイルを追い詰めたあの爆発的なパワーを、いつかその産駒が再びターフで爆発させるその日まで。 私たちは、三冠馬の影に隠れた「もう一頭の怪物」の物語を語り継ぎ、その奇跡のような走りを称え続けるだろう。