ポタジェ。その名は、どんな状況でも腐らずに成長し、最後には豊かな収穫をもたらす庭のように、彼の競走生涯を象徴していた。2億500万円という期待、ディープインパクト産駒という看板、そして名牝ジンジャーパンチの血。彼が背負ったものは、あまりにも大きすぎた。しかし、彼はその重圧を、静かなる闘志へと変えていった。
2億の期待、静かなる胎動
デビューから1番人気に推され続け、常に上位争いを演じた若駒時代。しかし、G1の壁は高く、厚かった。連勝を重ねても、重賞ではあと一歩届かない。世間は彼を「善戦マン」と呼び、次第に中心勢力からは外れていった。しかし、陣営は諦めなかった。友道康夫調教師が「ディープ産駒らしくない」と評したその泥臭い根性こそが、最強の武器になると信じていたからだ。
嵐を呼んだ淀の奇跡
2022年大阪杯。淀のターフは現役最強馬エフフォーリアと、上がり馬ジャックドールの「2強」に沸いていた。ポタジェの名を呼ぶ者は少なかった。しかし、猛烈なハイペースが他の有力馬のスタミナを削る中、ただ一頭、ひたむきに前を追い続けた馬がいた。直線、力強く抜け出したポタジェ。追いすがるレイパパレを凌ぎきり、8番人気の評価を突き破って先頭でゴール板を駆け抜けた瞬間、静かなる伏兵は歴史に名を刻むチャンピオンとなった。
最後の一歩まで貫いた不屈
栄光の後は、険しい道が待っていた。連覇を狙った大阪杯での敗北、長期の休養。7歳を過ぎ、復帰を果たした舞台はダートだった。しかし、運命は残酷にも彼に「競走中止」という幕引きを強いた。船橋の砂の上で彼が見せた最後の一歩。それは、たとえ体が限界であっても、ゴールを目指そうとする不屈の魂そのものだった。引退後、種牡馬として新たな人生を歩み始めたポタジェ。彼が遺した、どんな逆境でも諦めない「勝負根性」は、次代の産駒たちに必ず受け継がれていくことだろう。
「勝負根性のすごい馬で、大阪杯も勝ってくれた。芝でもダートでも走れるような子どもを」
――友道康夫
24戦6勝。獲得賞金は3億円を超え、その数字以上に彼の走りは見る者の胸を打った。華やかな血統に生まれながら、誰よりも泥臭く、誰よりも粘り強く。ポタジェという名がターフから消えても、あの日、阪神競馬場に巻き起こった大波乱の主役としての輝きは、永遠に色褪せることはない。





