North Flight - The Mile Queen
North Flight

The Queen North Flight

「マイル」という名の聖域を、
彼女は完璧なまでに支配した。

PROFILE

生誕1990.04.12
調教師加藤敬二 (栗東)
主戦騎手角田晃一 / 武豊
通算成績11戦8勝 [8-2-0-1]
主な勝鞍 安田記念 (G1)
マイルチャンピオンシップ (G1)
マイラーズカップ (G2)
府中牝馬S (G3)、阪神牝馬特別 (G3)

PEDIGREE

FATHER
トニービン
(愛) 1983
カンパラ
セヴェリン
×
MOTHER
シャダイフライト
(日) 1973
ヒッティングアウェー
アンジェリカ

父は凱旋門賞馬にして名種牡馬トニービン、その初年度産駒。母はセリで格安で取引された弱視の高齢馬。名門の血と雑草の魂が奇跡的に融合し、日本競馬界を席巻する究極のマイラーが誕生した。

CAREER RECORD

全レース成績

TOTAL: 11 RUNS 8 - 2 - 0 - 1
DATERACE NAMECOURSE / DIST.JOCKEYRESULT
1994.11.20マイルチャンピオンシップ (G1)京都 / 芝1600m角田晃一1st
1994.10.29スワンステークス (G2)阪神 / 芝1400m角田晃一2nd
1994.05.15安田記念 (G1)東京 / 芝1600m角田晃一1st
1994.03.06マイラーズカップ (G2)中京 / 芝1700m武豊1st
1994.01.30京都牝馬特別 (G3)阪神 / 芝1600m武豊1st
1993.12.19阪神牝馬特別 (G3)阪神 / 芝2000m武豊1st
1993.11.14エリザベス女王杯 (G1)京都 / 芝2400m角田晃一2nd
1993.10.17府中牝馬ステークス (G3)東京 / 芝1600m角田晃一1st
1993.09.18秋分特別 (900万下)阪神 / 芝2000m武豊5th
1993.07.25足立山特別 (500万下)小倉 / 芝1700m武豊1st
1993.05.014歳未出走新潟 / 芝1600m西園正都1st
CAREER HIGHLIGHTS

女王の覚醒

01
Fuchu Himba Stakes
1-1
1993.10.17 / 東京 1600m

THE BREAKTHROUGH

第41回 府中牝馬ステークス

デビューからわずか4戦目、格上挑戦となった重賞舞台。50kgの軽量を利して古馬を一蹴したこの勝利が、後の伝説への扉を開いた。ここから彼女は、一気に牝馬のトップ戦線へと駆け上がっていく。

WEIGHT
50kg
RESULT
1st
02
Yasuda Kinen
5
1994.05.15 / 東京 1600m

GLORY INTL

第44回 安田記念

国際競走となり、世界中から強豪が集ったマイル王決定戦。出遅れを挽回し、直線で外から一気に突き抜けたパフォーマンスは圧巻の一言。角田晃一に初のG1タイトルをもたらし、名実ともに「マイルの女王」となった。

1着 ノースフライト 2着 トーワダーリン
03
Swan Stakes
2-3
1994.10.29 / 阪神 1400m

STARS COLLIDE

第37回 スワンステークス

スプリント王サクラバクシンオーとの初対決。1400mという絶妙な距離設定で、女王は宿敵の後塵を拝した。しかし、この敗戦が次走の歴史的なリベンジ劇をさらにドラマチックなものへと昇華させる。

TIME
1:20.1
RIVAL
S.Bakushin O
04
Mile Championship
1
1994.11.20 / 京都 1600m

FINAL MAJESTY

第11回 マイルチャンピオンシップ

引退レースとなった宿敵との再戦。マイルの距離では負けられない。直線、サクラバクシンオーを力強く競り落とし、自らの庭で完全勝利を飾る。コースレコードで駆け抜けた、あまりにも美しすぎる引退の花道。

1着 ノースフライト 2着 サクラバクシンオー
DATA ANALYTICS

究極の
マイルレコード

1994年のマイルチャンピオンシップ。引退レースとして臨んだ彼女は、京都のターフを1分33秒0という驚異的なタイムで駆け抜けた。従来のコースレコードを0.3秒更新するこの記録は、当時のマイル路線のレベルを一段階引き上げた。マイル戦5戦全勝という数字以上に、彼女が刻んだ時計は、その絶対的な適性と能力の証明であった。

1:33.0

COURSE RECORD

1600m 走破時計

※1994 マイルチャンピオンシップ

MILE SUPREMACY

マイル戦 5戦5勝
PREVIOUS RECORD1:33.3
PAST BEST
NORTH FLIGHT (1994)1:33.0
NEW RECORD
WIN RATE (MILE)100%
PERFECT
マイル適性評価
NORTH FLIGHT
世界の強豪馬を相手にこれだけ強い競馬をするんだから、本当に凄い馬。
主戦騎手 角田晃一
安田記念 勝利インタビューより
何十年に1頭出るか、出ないか。
そういう馬だと思っています。
調教師 加藤敬二
ノースフライト評より
FAN VOICES

ファンからの声

F

「フーちゃん」と呼ばれて親しまれていた彼女の愛らしさと、レースで見せる圧倒的な力強さ。そのギャップがたまらなく好きでした。マイルCSの完勝劇は今も忘れられません。

S

安田記念で外国のG1馬を並ぶ間もなく差し切った瞬間の衝撃。日本にもついに世界レベルのマイラーが誕生したと確信させた、歴史的な一日でした。

Y

安く買い取られた母シャダイフライトから、これほどの天才が生まれる。競馬のロマンと血統の不思議さを教えてくれたのは、間違いなく彼女でした。

BEHIND THE SCENES

秘蔵エピソード

「マイルの女王」と呼ばれた彼女の、知られざる素顔と物語

01

京大卒・女性厩務員との絆

彼女の担当は、当時異色の経歴で話題となった石倉幹子氏。石倉氏が「フーちゃん」と愛称を付け、我が子のように慈しんだことで、ノースフライトは本来の能力を開花させた。ゲートを嫌がる繊細な一面を、石倉氏の深い愛情が支えていたのである。

02

母シャダイフライトの奇跡

母は弱視を抱え、セリではわずか410万円の「最安値」で落札された。誰もが期待しなかった血統から、凱旋門賞馬トニービンの初年度産駒として誕生。雑草の魂を持つ母と世界の血が交わったとき、競馬史を揺るがす奇跡が起きたのである。

Sakura Bakushin O
THE ARCHRIVAL
DESTINY

SAKURA BAKUSHIN O

サクラバクシンオー

短距離の絶対王者と、マイルの女王。二頭の天才が交差した1994年秋は、日本競馬界が「距離適性」という概念を明確に意識した時代でもあった。

スワンSではバクシンオーがその快速を見せつけ、マイルCSではノースフライトがスタミナと爆発力でねじ伏せる。互いの領分を侵させない誇り高き戦いは、単なる勝敗を超えた伝説となった。

「彼女が完調なら1200mでも勝てたかもしれない」。宿敵の陣営にそう言わしめたほど、彼女の存在は巨大だった。

1994マイルチャンピオンシップ
1stノースフライト
vs
2ndサクラバクシンオー

マイルを舞った女王

マイルを舞った女王

彼女の現役生活は、わずか1年半。しかしその短期間に凝縮された輝きは、三十年の時を経てもなお色褪せることはない。トニービンの初年度産駒として、クラシックの舞台には間に合わなかった。しかし、その遅れてきた天才は、マイルというカテゴリーにおいて「絶対」を証明し、日本競馬界に新たな価値観を提示したのである。

異例のデビューと飛躍

4歳の5月。同期たちがクラシックの熱狂の中にいた頃、彼女は新潟の静かなターフで産声を上げた。9馬身差の圧勝。そこから彼女の進撃は始まった。唯一の敗戦となった秋分特別の挫折さえも、続く府中牝馬Sへの挑戦、そして重賞初制覇というドラマへの伏線に過ぎなかった。エリザベス女王杯での惜敗が、彼女を「最強のマイラー」へと導く羅針盤となったのである。

世界を震わせた二冠

1994年、安田記念。外国馬を退け、世界の扉をこじ開けた彼女の末脚は、もはや国内に敵がいないことを物語っていた。秋、スプリント王サクラバクシンオーとの邂逅。距離適性の壁に泣いたスワンSを経て、彼女は自身の庭であるマイルCSでその本領を発揮する。直線、ライバルを力強く引き離していくその姿は、美しくも残酷なほどに完璧な「女王の戴冠式」であった。

永遠に語り継がれる輝き

11戦8勝。マイル戦負けなし。数字上の記録もさることながら、彼女が愛されたのはその「物語」ゆえだ。安値で落札された母の仔が、世界一の父の血を得て、頂点へ。石倉厩務員に「フーちゃん」と愛されたその柔らかな眼差しは、レースでは鋭い闘志へと変わった。完熟した強さを残したまま、彼女は惜しまれつつターフを去った。完璧な終わり方は、完璧な女王にこそ相応しい。私たちは今も、マイルの風の中に、彼女の疾走する面影を探している。

「彼女ほどマイルを美しく、完璧に支配した馬を私は知らない」
―― 競馬史の証言者たち

その光のような軌跡は、これからも日本の競馬史において、マイルの基準点として輝き続けるだろう。かつて、ノースフライトという、天から舞い降りた女王がいたことを、私たちは決して忘れない。