Namur

The Resilience Namur

絶望の淵から、
彼女は「光」を追い越した。

PROFILE

生誕2019.03.02
調教師高野友和 (栗東)
主戦騎手藤岡康太 / J.モレイラ / 武豊
通算成績18戦5勝 [5-3-2-8]
主な勝鞍 マイルチャンピオンシップ (G1)
富士ステークス (G2)
チューリップ賞 (G2)
安田記念 (G1) 2着、ドバイターフ (G1) 2着

PEDIGREE

FATHER
ハービンジャー
(英) 2006
Dansili
Penang Pearl
×
MOTHER
サンブルエミューズ
(日本) 2010
ダイワメジャー
ヴィートマルシェ

父はキングジョージを歴史的大差で制した名馬、母系は桜花賞馬キョウエイマーチへと連なる日本屈指の牝系。欧州の重厚なスタミナと日本のスピードが、究極の瞬発力として彼女の中で結実した。

CAREER RECORD

全レース成績

TOTAL: 18 RUNS 5 - 3 - 2 - 8
DATERACE NAMECOURSE / DIST.JOCKEYRESULT
2024.11.17マイルチャンピオンシップ (G1)京都 / 芝1600mC.デムーロ17th
2024.06.02安田記念 (G1)東京 / 芝1600m武豊2nd
2024.03.30ドバイターフ (G1)メイダン / 芝1800mC.デムーロ2nd
2023.12.10香港マイル (G1)沙田 / 芝1600mW.ビュイック3rd
2023.11.19マイルチャンピオンシップ (G1)京都 / 芝1600m藤岡康太1st
2023.10.21富士ステークス (G2)東京 / 芝1600mJ.モレイラ1st
2022.10.16秋華賞 (G1)阪神 / 芝2000m横山武史2nd
2022.05.22オークス (G1)東京 / 芝2400m横山武史3rd
2022.03.05チューリップ賞 (G2)阪神 / 芝1600m横山武史1st
2021.09.112歳新馬中京 / 芝1600m川田将雅1st
CAREER HIGHLIGHTS

不屈の閃光

01
Tulip Sho
3-6
2022.03.05 / 阪神 1600m

THE AWAKENING

第29回 チューリップ賞

阪神JFの出遅れによる4着。その悔しさを晴らすべく挑んだ桜花賞トライアル。中団でしっかりと折り合うと、直線では次元の違う末脚を爆発させ、ライバルたちを鮮やかに置き去りにした。「ナミュールここにあり」を世界に知らしめた、重賞初制覇の衝撃。

TIME
1:33.2
LAST 3F
33.9
02
Fuji Stakes
4
2023.10.21 / 東京 1600m

THE REBORN

第26回 富士ステークス

G1の壁に阻まれ続けた苦境の時期を経て、名手モレイラとの出会いが彼女を呼び覚ました。一完歩ごとに加速し、突き抜けるその姿に、かつての天才少女の面影が重なる。1年半ぶりの勝利は、きたるべき頂点への確かな前奏曲だった。

1着 ナミュール 2着 レッドモンレーヴ
03
Mile Championship
8-16
2023.11.19 / 京都 1600m

THE DESTINY

第40回 マイルチャンピオンシップ

当日の乗り替わり。代打・藤岡康太。絶望的な最後方から、淀の長い直線を彼女は飛んだ。15頭をごぼう抜きにする光速の末脚。悲願のG1制覇は、急逝した友へと捧げる最後の輝きとなった。競馬史に永遠に刻まれる、人馬一体の奇跡。

TIME
1:32.5
LAST 3F
33.0
04
Yasuda Kinen
5
2024.06.02 / 東京 1600m

GLOBAL PRIDE

第74回 安田記念

武豊を背に、世界最強馬ロマンチックウォリアーへ真っ向勝負を挑んだ。極限の上がり32秒9。クビ差届かなかったその敗北には、現役マイル女王としての誇りと気高さが満ちていた。敗れてなお、彼女の末脚こそが日本マイルの至宝であることを証明した。

1着 ロマンチックウォリアー 2着 ナミュール
DATA ANALYTICS

光を越える
究極の瞬発力

ナミュールの真骨頂は、他馬とは物理法則が異なるかのような「上がりのキレ」にある。2023年のマイルCSで記録した33.0秒は、絶望的な展開をひっくり返す魔法の数字だった。股関節の圧倒的な柔軟性が生み出す跳躍は、マイルというスピードカテゴリーにおいて無類の武器となった。

32.9s

PEAK SPEED

最速上がり3Fタイム

※2024 安田記念

LATE SPEED RATING

末脚の破壊力
G1 AVERAGE CLOSER 34.2s
STANDARD ZONE
NAMUR (MILE CS) 33.0s
MIRACLE GEAR
TOP GEAR POTENTIAL -1.2s
OVERDRIVE
推定加速力優位性
NAMUR
僕がコース取りを間違えなければ、
絶対に突き抜けてくれると思いました。
騎手 藤岡康太
2023年 マイルCS勝利後インタビュー
彼女の股関節は非常に柔軟で、
それは他の馬とは違う異次元の才能です。
調教師 高野友和
共同記者会見にて
FAN VOICES

ファンからの声

F

あんなに遠いところから届くなんて。康太騎手のガッツポーズとナミュールの美しさが、夕暮れの京都競馬場に重なって一生忘れられない景色になりました。

S

キョウエイマーチの血が、令和にマイルG1を勝つ。そんなドラマを見せてくれただけで感無量です。引退は寂しいけど、コントレイルとの産駒が楽しみすぎる。

N

お疲れ様、ナミュール。最後のマイルCSは心配だったけど、無事に繁殖に上がれると聞いて安心しました。君は最強のマイル女王でした。

BEHIND THE SCENES

秘蔵エピソード

繊細な少女から、堂々たる女王へと成長した彼女の裏側

01

覚醒を呼んだ「女王様の風格」

かつては繊細で小柄だったナミュールだが、4歳秋を境に精神的な変貌を遂げた。高野調教師は「立ち居振る舞いが女王様になった」と語る。自分の強さを確信したかのような堂々たる振る舞いが、あの歴史的な差し切りを生む土台となった。

02

「飼い食い」という名のアプローチ

体が小さく、馬体重の維持が最大の課題だった彼女。陣営は「飼い食い」の改善に全精力を注いだ。丁寧な馬体管理とトレーニング体系の構築。少しずつ、確実に増えていった馬体重は、陣営と彼女が共に歩んだ努力の証明だった。

Soul Rush
THE ARCHRIVAL
DESTINY

SOUL RUSH

ソウルラッシュ

マイル路線の王座を巡り、幾度となく矛を交えた宿命のライバル。

2023年マイルCS。ソウルラッシュとモレイラ騎手が勝利を確信した刹那、外から強襲したのがナミュールだった。わずかクビ差。その一瞬の差が、二頭の運命を分けた。

ナミュールが去り、ソウルラッシュが悲願の王座に就いた2024年の京都。互いに高め合い、凌ぎを削った日々は、日本マイル界の黄金時代として語り継がれるだろう。

2023 MILE CHAMPIONSHIP
1st ナミュール
vs
2nd ソウルラッシュ

空へ届いた末脚

空へ届いた末脚

競馬に「もし」は禁物だ。しかし、2023年11月19日のあの日、多くのファンが運命という言葉を信じずにはいられなかった。本来乗るはずだった名手が負傷し、急遽舞い込んだ「代打」。そこで出会ったのは、誰よりも真面目に、誰よりも情熱的に競馬と向き合ってきた男、藤岡康太だった。彼はナミュールを信じ、ナミュールは彼の期待に応え、誰も届かないはずの空を翔けた。

三冠世代の、孤独な戦い

デビューから「天才少女」の呼び声をほしいままにしながら、G1のタイトルだけが遠かった。桜花賞10着、オークス3着、秋華賞2着。常に有力候補でありながら、あと一歩が届かない。それでも彼女は走ることをやめなかった。小柄な馬体に、父ハービンジャー譲りの底力と、母系から受け継いだ日本のスピードを宿し、幾度もの挫折を血肉に変えていった。彼女を支えていたのは、陣営の「この馬は世界一の瞬発力を持っている」という揺るぎない確信だった。

淀に舞った奇跡

8度目の正直。マイルチャンピオンシップ。乗り替わりという逆境を、藤岡康太は「チャンス」へと変えた。最後方でじっと息を潜め、彼女の爆発力を極限まで溜め込む。直線、大外。ナミュールが解き放たれた瞬間、京都の芝は彼女だけの滑走路となった。15頭をまとめて置き去りにしたあの豪脚は、単なる勝利以上の何かを、見る者の心に刻みつけた。それが藤岡康太という騎手の最後のG1タイトルになるとは、その時は誰も知る由もなかった。

女王が遺した誇り

2024年。彼女は世界へと羽ばたき、ドバイで、香港で、そして日本の安田記念で、女王としての誇りを示し続けた。武豊騎手が「マイル界の至宝」と称え、ロマンチックウォリアーと死闘を演じたあの姿は、不遇の時代を乗り越えた者だけが放つ、孤高の輝きに満ちていた。引退レースとなったマイルCSでの大敗さえも、全力で走り抜いた彼女の「限界」の証だったのかもしれない。

「康太の魂と一緒に走ったあの直線は、私の人生で最高の宝物です」
―― 競馬ファンの記憶より

通算18戦。数字では語り尽くせないドラマがそこにはあった。ナミュール。その名は、逆境にあっても決して翼を折らなかった不屈の精神の象徴として、これからも語り継がれていくだろう。いつか、彼女の産駒がターフに現れたとき、私たちは再び思い出すに違いない。淀の夕闇を切り裂き、天まで届いたあの光のような末脚を。