23戦という長い旅路。ジャスティンパレスが刻んだ足跡は、決して平坦なものではなかった。セレクトセールでの高額落札、偉大な父ディープインパクトの末裔としての期待。しかし、3歳春のクラシック戦線では皐月賞9着、日本ダービー9着と、主役の座からは遠く離れた場所にいた。それでも、彼は立ち止まることはなかった。
淀の長丁場で開いた大輪
転機は古馬となって訪れた。阪神大賞典での力強い勝利を経て挑んだ、2023年天皇賞(春)。改修直後の京都競馬場、伝統の3200m。かつて父が伝説を作ったその舞台で、彼はついに悲願のGIタイトルを掌中に収める。6度目のGI挑戦での戴冠。それは、遅咲きの天才が「不屈のステイヤー」へと進化した瞬間だった。淀のターフを悠々と駆け抜けるその姿に、ファンは偉大な父の影を重ね、新たな王者の誕生を祝福した。
世界最強に挑んだ、ステイヤーの意地
しかし、王者の道には常に強大な影が寄り添っていた。同世代の怪物、イクイノックス。距離適性の差があると言われながらも、彼は果敢に2000mの天皇賞(秋)で宿敵に挑んだ。結果は2着。それでも、極限のスピード決着の中で見せた上がり33秒7の末脚は、彼が単なる「長い距離の馬」ではないことを全世界に知らしめた。勝てずとも、その走りは最強を揺さぶり、見る者の心を激しく震わせた。
未来へ繋ぐ、最後の疾走
6歳まで走り続けたそのタフネスもまた、彼の誇りである。全盛期を過ぎたと言われながらも、10番人気で迎えた2025年宝塚記念での激走、そして天皇賞(秋)での3着。枯れることのない闘志は、最後まで色褪せることはなかった。通算23戦。獲得賞金10億円超。数字に刻まれた栄光以上に、敗北を糧に強くなり続けたその精神こそが、ジャスティンパレスという馬を「名馬」たらしめている。
「いつか、こんな馬に巡り合いたい。そう思わせる偉大な馬でした」
――杉山晴紀
夕暮れのターフを去るその背中に、惜しみない拍手が送られる。かつて京都で、東京で、そして世界で戦い抜いた青鹿毛の勇士。彼は今、種牡馬として新たな夢のスタートラインに立つ。彼が証明した「不屈の精神」は、その血を受け継ぐ子供たちによって、再びターフの上で輝きを放つだろう。不屈のステイヤー、ジャスティンパレス。その物語は、まだ終わらない。




