Gran Alegria。スペイン語で「大いなる歓び」「大歓声」を意味するその名は、 彼女の運命を予言していたかのようだった。 ターフに現れるだけで、観衆は息を呑み、そして最後には熱狂の渦に包まれる。 彼女が駆け抜けたマイルの舞台は、常に喝采と共にあった。
宿命を背負った天才少女
父は英雄ディープインパクト、母は米国のG1馬タピッツフライ。 約束された超良血として生まれた彼女だが、その馬生は決して平坦ではなかった。 デビュー前に母を亡くし、期待された弟もデビュー直後にこの世を去った。 残された彼女は、一族の希望を一身に背負い、走るしかなかった。 桜花賞を驚異的なレコードで制した時、人々は彼女の中に眠る「怪物」の片鱗を見た。 しかし、それはまだ序章に過ぎなかった。
スピードの概念を変えた衝撃
彼女のキャリアにおけるハイライトは、2020年のスプリンターズステークスだろう。 後方15番手。中山の短い直線では絶望的とも言える位置取り。 だが、そこからの彼女の走りは、物理法則を無視しているかのようだった。 一頭だけ倍速で再生されているかのような末脚で、先行するライバルたちを瞬く間に飲み込んだ。 ルメール騎手が「信じられない」と語ったその走りは、 ディープインパクト産駒がスプリント戦でも頂点に立てることを証明した歴史的瞬間でもあった。
名伯楽との最後の夢
管理する藤沢和雄調教師にとって、彼女は引退間近に出会った最後の傑作だった。 マイルでは無敵。だからこそ、師は彼女に「3階級制覇」という夢を託し、 適性外とも思える2000mの戦い(大阪杯、天皇賞秋)へと送り出した。 結果は敗れたものの、最後まで懸命に食らいつく姿は、彼女の類稀な根性を示していた。 「天皇賞を使ってごめんなさい」 引退式での師の言葉は、愛馬への深い愛情と、無理をさせたことへの悔恨が入り混じっていた。 しかし、その挑戦があったからこそ、彼女の「絶対的なスピード」の価値はより際立ったと言えるだろう。
「彼女はすべてを持っていた。特にそのスピードは、私の騎手人生でも特別なもの」
――C.ルメール
引退レースとなったマイルチャンピオンシップ。 連覇を達成し、G1・6勝目を挙げた彼女は、最後まで「絶対女王」のままターフを去った。 速い馬は脆い、という定説を覆し、強く、速く、そしてタフに走り続けたグランアレグリア。 その背中に浴びせられた大歓声は、これからもファンの記憶の中で響き続けるだろう。




