Gold Ship

The Maverick Gold Ship

「普通に走る」ことすら、
彼にとっては奇跡だった。

PROFILE

生誕2009.03.06
調教師須貝尚介 (栗東)
主戦騎手内田博幸 / 横山典弘
通算成績28戦13勝 [13-3-2-10]
主な勝鞍 宝塚記念 (G1) 2連覇
皐月賞 (G1)、菊花賞 (G1)
有馬記念 (G1)
天皇賞・春 (G1)

PEDIGREE

FATHER
ステイゴールド
(日本) 1994
サンデーサイレンス
ゴールデンサッシュ
×
MOTHER
ポイントフラッグ
(日本) 1998
メジロマックイーン
パストラリズム

父は稀代の勝負根性を誇るステイゴールド、母の父は最強の芦毛メジロマックイーン。「黄金配合」と呼ばれた血統背景は、彼に無尽蔵のスタミナと、時に制御不能となるほどの強烈な個性を授けた。

CAREER RECORD

主要レース成績

TOTAL: 28 RUNS 13 - 3 - 2 - 10
DATERACE NAMECOURSE / DIST.JOCKEYRESULT
2015.12.27有馬記念 (G1)中山 / 芝2500m内田博幸8th
2015.06.28宝塚記念 (G1)阪神 / 芝2200m横山典弘15th
2015.05.03天皇賞・春 (G1)京都 / 芝3200m横山典弘1st
2014.10.05凱旋門賞 (G1)ロンシャン / 芝2400m横山典弘14th
2014.06.29宝塚記念 (G1)阪神 / 芝2200m横山典弘1st
2013.06.23宝塚記念 (G1)阪神 / 芝2200m内田博幸1st
2012.12.23有馬記念 (G1)中山 / 芝2500m内田博幸1st
2012.10.21菊花賞 (G1)京都 / 芝3000m内田博幸1st
2012.04.15皐月賞 (G1)中山 / 芝2000m内田博幸1st
2011.07.092歳新馬函館 / 芝1800m秋山真一1st
CAREER HIGHLIGHTS

不沈艦の進撃

01
Satsuki Sho
7-14
2012.04.15 / 中山 2000m

THE WARP

第72回 皐月賞

前日の雨で荒れ果てた内路。全馬が外へ出す中、内田博幸は敢えて泥濘の内を選択した。 「ワープ」と称された異次元の進出。4コーナーで最後方付近から一気に先頭へ。 常識を嘲笑うかのような泥まみれの独走劇は、怪物の誕生を告げる衝撃の号砲となった。

TIME
2:01.3
FAV
4th
02
Takarazuka Kinen
11
2014.06.29 / 阪神 2200m

UNBEATABLE REIGN

第55回 宝塚記念

横山典弘とのコンビで見せた、史上初の宝塚記念連覇。 気まぐれな性格を熟知した鞍上の導きに応え、力強く仁川の坂を駆け上がった。 「今日は走る気だった」とファンを安堵させた完璧な勝利。 気性の激しさを力に変え、阪神の地で絶対的な王者の地位を確立した。

1着 ゴールドシップ 2着 カレンミロティック
03
Tenno Sho Spring
1-1
2015.05.03 / 京都 3200m

FINAL GLORY

第151回 天皇賞(春)

ゲート入りを激しく拒み、発走を遅らせるトラブル。しかし一度走り出せば、そこは彼の独壇場だった。 向正面から捲り上げるロングスパート。3200mを走り切るスタミナと、執念の末脚。 6歳にして手にした盾の栄冠は、彼が単なる「曲者」ではなく「至高のステイヤー」であることを証明した。

TIME
3:14.7
G1 WINS
6th
DATA ANALYTICS

気性と実力の
特異なバランス

ゴールドシップの成績を紐解くと、他の名馬には見られない「波」が浮かび上がる。 1着か、さもなくば掲示板外か。そのムラの激しさは、走破時計や上がり3Fよりも、彼の「走る意欲」に直結していた。 阪神競馬場での圧倒的な適性と、時折見せる大凡走。この予測不能なデータこそが、彼の人間臭い魅力の源泉であった。

6-WINS

G1 VICTORIES

芝GI 通算6勝

※2歳〜6歳まで毎年重賞勝利

PERFORMANCE RATIO

気分と着順の相関
WINNING RATE (HANSHIN) 60%
STRONG ADAPTABILITY
MOOD DEPENDENCY MAX
UNPREDICTABLE
FAN SUPPORT (ALWAYS) 1st FAV
BELIEVED BY FANS
予測不能指指数
GOLD SHIP
ゴールドシップに乗る騎手は勝つことを祈るのではなく、
普通に走ってくれることを祈る。
主戦騎手 横山典弘
インタビューより
本当にヤンチャな相棒ですよ。
力ずくで止めるというのは無理ですから。
厩務員 今浪隆利
引退に際して
FAN VOICES

ファンからの声

S

皐月賞のワープは今見ても魔法のようです。あんなに泥だらけになって、インから突き抜ける芦毛は二度と現れないでしょう。彼の走りは理屈じゃありませんでした。

G

宝塚記念での120億円消失事件。あの瞬間は呆然としましたが、今では笑い話です。そんな「やらかし」も含めて、ゴールドシップという馬を愛さずにはいられません。

A

ウマ娘から入りましたが、実物のレース動画を見てさらに驚きました。中身が人間だと言われるのも納得のキャラクター性。引退してもなお愛される理由がよく分かります。

BEHIND THE SCENES

秘蔵エピソード

予測不能な「白い悪魔」が残した数々の伝説

01

猛獣と化した共同通信杯

共同通信杯を前に、それまで大人しかった彼は突如として荒々しさを爆発させた。調教助手を振り落として大怪我を負わせ、手綱を引く今浪厩務員を何度も引きずり回したという。この瞬間、一頭のサラブレッドの中に「怪物の魂」が宿ったのかもしれない。

02

カメラを意識する「人間性」

引退後、牧場を訪れる見学客に対し、彼は驚くべき振る舞いを見せている。カメラを向けられると、自ら最も見栄えのする角度で止まり、ポーズを決めるというのだ。自分の立ち位置を理解しているかのような知的な行動は、彼が「中身は人間」と言われる所以である。

Fenomeno
THE ARCHRIVAL
DESTINY

FENOMENO

フェノーメノ

「白」と「黒」、両極端な個性がぶつかり合った宿命のライバル。同世代のフェノーメノは、ゴールドシップがどうしても超えられなかった高い壁として立ちはだかった。

漆黒の馬体を輝かせ、長距離の舞台で精密機械のような走りを見せるフェノーメノに対し、白銀の暴君は荒々しい捲りで挑み続けた。特に天皇賞(春)での激闘は、日本競馬における「静と動」の対比そのものだった。

今浪厩務員が「どっちが先に来るか楽しみ」と語ったあのライバル関係は、ゴールドシップという物語を語る上で欠かせない影の主役である。

2013/2014天皇賞(春)
2ndゴールドシップ
vs
1stフェノーメノ

愛すべき不沈艦

愛すべき不沈艦

競馬の歴史において、これほどまでにファンに愛され、同時に翻弄し続けた馬は他にいないだろう。ゴールドシップ。その名は単なる勝利の記録ではなく、破天荒なドラマの代名詞となった。芦毛の美しい馬体とは裏腹に、その内面に秘められたのは、既存のサラブレッドの枠組みを嘲笑うかのような自由奔放な魂だった。

常識を塗り替えた「ワープ」

彼の伝説は、2012年の皐月賞から始まった。前日の雨で田んぼのように荒れた中山競馬場の内路。他の全馬がそれを避けて外へ回る中、彼はあざ笑うかのように泥濘へ飛び込んだ。絶望的な位置から、4コーナーを回った時には先頭に立っている。その姿は「ワープ」としか形容できなかった。勝利への執念と、それを可能にする強靭なスタミナ。人々はこの時、新しい時代の王者の誕生を予感した。

「いちご大福」と称された二面性

しかし、王者の道は平坦ではなかった。圧勝したかと思えば、次走ではまるで走る気を失ったかのように大敗する。1着と5着を繰り返すその気まぐれな成績に、ファンは「いちご大福」という愛称を与えた。それは揶揄ではなく、彼の人間臭さに対する親しみだった。ゲート入りを拒み、120億円もの馬券を一瞬で紙屑に変えたあの大出遅れ。そんな「事件」さえも、彼がターフに残す足跡の一部だった。彼は勝つためだけに走っていたのではない。自分の心に従って走っていたのだ。

今浪厩務員、そして最後の円環

そんな彼が唯一、心を許した人間がいた。厩務員の今浪隆利である。暴君として恐れられたゴールドシップも、今浪の前では一頭の愛らしい馬に戻り、甘える仕草を見せた。人間と馬の垣根を超えた深い絆。その絆があったからこそ、彼は6歳まで第一線で走り続け、古馬G1を4年連続で制するという偉業を達成できたのだ。引退レースの有馬記念。かつての主戦・内田博幸の背中で、彼は物語の幕を下ろした。通算28戦13勝。その数字を超えた感動が、今もなお語り継がれている。

「彼はね、本当に賢い。自分が何者かを知っているんです」
―― 須貝尚介

不沈艦が去った後のターフは、少しだけ静かになった。しかし、彼が残した「競馬は、走るだけではない」という教えは、今もファンの胸に刻まれている。白くなったその体で悠々と牧場を歩く姿は、まるで現役時代の喧騒を懐かしんでいるかのようだ。ゴールドシップ。彼は間違いなく、日本競馬が産んだ最大の、そして最も愛された「奇跡」の一頭だったのである。