競馬に「絶対」はない。しかし、ドウデュースという馬には「復活」という言葉が誰よりも似合っていた。2022年、日本ダービーをレコードで制した瞬間、彼は世代の頂点に立った。しかし、そこから始まったのは栄光ばかりではない。フランスの重い馬場に屈した凱旋門賞、不慮の怪我で出走を断念したドバイ。イクイノックスというライバルが次々と記録を塗り替えていく中で、ドウデュースは長く暗いトンネルの中にいた。
レジェンドとの誓い
「この馬でもう一度、勝ちたい」。武豊騎手の想いは、単なる勝利への渇望を超えた執念だった。50歳を超えてなお進化を続けるレジェンドと、怪我から這い上がってきた天才馬。2023年の有馬記念、そのコンビが復活した時、中山競馬場は異様な熱気に包まれた。大外から捲り上げ、直線で一気に先頭を奪う。その鮮烈な走りは、全盛期と変わらぬ、いや、それ以上の輝きを放っていた。それは、彼を信じ続けたすべての人々への、最高の「逆襲」だった。
終わりなき進化
5歳。多くの名馬が引退を考える年齢になっても、彼の脚は止まらなかった。2024年秋。天皇賞・秋で見せた「上がり32秒5」という衝撃。それは、ハーツクライから受け継いだスタミナに、母から譲り受けたスピードが完璧に融合した、究極のサラブレッドの姿だった。ジャパンカップでの壮絶な叩き合いを制した際、ゴール板を駆け抜けるその瞳は、2歳時の朝日杯で見せた無邪気さと、歴戦の勇士としての誇りが混ざり合っていた。
「絶対、種牡馬として成功する。彼の仔でもう一度、大きな夢を見たい」
――武豊
有馬記念目前の怪我による電撃引退。ファンが望んだ完璧なラストランは叶わなかったかもしれない。しかし、その未完の美学こそが、ドウデュースらしいと言えるのではないか。4年連続G1制覇、そして武豊という唯一無二のパートナーと共に歩んだ16戦。彼がターフに残した蹄跡は、これからも「夢」を語る上で欠かせない物語として、語り継がれていく。逆襲のヒーローは今、静かに故郷へと帰り、次なる伝説の幕開けを待っている。




