その馬は、光のように現れ、光のように去っていった。 アグネスタキオン。物理学用語で「超光速の粒子」を意味するその名は、彼の運命を暗示していたかのようだ。 デビューからわずか4戦。期間にして約5ヶ月。 その短い時間に、彼は競馬の常識を覆すほどの強烈なインパクトを残した。
完成された未完成
新馬戦で見せた異次元の末脚。ラジオたんぱ杯で最強世代のライバルたちを子供扱いした衝撃。 そして、最初で最後となったG1・皐月賞。 彼は常に完璧だった。しかし、河内騎手が「本来の走りではない」と評したように、 私たちは遂に彼の「本気」を見ることはなかったのかもしれない。 底を見せないまま、彼は伝説の中に消えた。 だからこそ、人々は夢を見る。「もし彼がダービーを走っていたら」「もし古馬になっていたら」。 その夢想こそが、彼が「幻の三冠馬」と呼ばれる所以である。
受け継がれる光
引退後、種牡馬となった彼は、その溢れんばかりの才能を産駒たちに伝えた。 ダイワスカーレット、ディープスカイ、キャプテントゥーレ。 彼の血を引く馬たちは、父が走れなかった距離を、父が見られなかった景色を、次々と制していった。 2008年には内国産種牡馬として51年ぶりのリーディングサイアーに輝く。 走る能力だけでなく、伝える能力においても、彼は間違いなく天才だった。
永遠の超光速
2009年、11歳という若さで彼はこの世を去った。 あまりにも早すぎる死。しかし、その血と伝説は決して消えることはない。 競馬場にファンファーレが鳴り響くたび、私たちは思い出すだろう。 かつて、他の誰よりも速く、美しく、そして儚く駆け抜けた栗毛の怪物がいたことを。 アグネスタキオン。その光は、今も私たちの心の中で輝き続けている。
「彼は全てを超越していた。まさに超光速の粒子だった」




