ジャックドール:黄金の逃走劇
Jack d'Or

Golden KnightJack d'Or

「逃げて、差す。」
精密機械が刻んだ、黄金の1分57秒4。

PROFILE

生誕2018.04.08
調教師藤岡健一 (栗東)
主戦騎手藤岡佑介 / 武豊
通算成績17戦8勝 [8-2-0-7]
主な勝鞍大阪杯 (G1)
札幌記念 (G2)
金鯱賞 (G2)
白富士ステークス (L)

PEDIGREE

FATHER
モーリス
(日本) 2011
スクリーンヒーロー
メジロフランシス
×
MOTHER
ラヴァリーノ
(米国) 2010
Unbridled's Song
Via Lavina

父モーリスの圧倒的なパワーと、母父Unbridled's Songが誇る米国スピード血統が融合。サンデーサイレンスの血を持たない異色の配合は、2000mという距離で極限の持続力を発揮する「逃げのスペシャリスト」を誕生させた。

CAREER RECORD

全レース成績

TOTAL: 17 RUNS8 - 2 - 0 - 7
DATERACE NAMECOURSE / DIST.JOCKEYRESULT
2023.10.29天皇賞・秋 (G1)東京 / 芝2000m藤岡佑介11th
2023.08.20札幌記念 (G2)札幌 / 芝2000m武豊6th
2023.06.04安田記念 (G1)東京 / 芝1600m武豊5th
2023.04.02大阪杯 (G1)阪神 / 芝2000m武豊1st
2022.12.11香港カップ (G1)沙田 / 芝2000m武豊7th
2022.10.30天皇賞・秋 (G1)東京 / 芝2000m藤岡佑介4th
2022.08.21札幌記念 (G2)札幌 / 芝2000m藤岡佑介1st
2022.04.03大阪杯 (G1)阪神 / 芝2000m藤岡佑介5th
2022.03.13金鯱賞 (G2)中京 / 芝2000m藤岡佑介1st
2022.01.29白富士S (L)東京 / 芝2000m藤岡佑介1st
2021.11.28ウェルカムS (3勝)東京 / 芝2000m藤岡佑介1st
2021.10.03浜名湖特別 (2勝)中京 / 芝2000m藤岡康太1st
2021.09.113歳上1勝クラス中京 / 芝2000m藤岡佑介1st
2021.05.08プリンシパルS (L)東京 / 芝2000m三浦皇成5th
2021.04.253歳未勝利阪神 / 芝2000m藤岡佑介1st
2020.12.272歳未勝利阪神 / 芝2000m藤岡佑介2nd
2020.12.062歳新馬中山 / 芝2000m斎藤新2nd
CAREER HIGHLIGHTS

黄金の航路

01
Kintako Sho
5-10
2022.03.13 / 中京 2000m

THE RECORD

第58回 金鯱賞

5連勝での重賞初制覇。それは、従来のコースレコードを1秒1も短縮する1分57秒2という驚愕の時計と共に成し遂げられた。影をも踏ませぬ逃げ脚に、誰もが新たな時代の主役の誕生を確信した瞬間だった。

TIME
1:57.2
COURSE
RECORD
02
Osaka Hai 2022
4
2022.04.03 / 阪神 2000m

THE CLASH

第66回 大阪杯

年度代表馬エフフォーリアとの「二強対決」。初めて背負うG1の重圧、そして連戦の疲労。結果は5着に沈んだものの、G1馬たちを相手に真っ向から逃げ勝負を挑んだその姿勢は、次なる飛躍への確かな火種となった。

1着 ポタジェ5着 ジャックドール
03
Sapporo Kinen
3-3
2022.08.21 / 札幌 2000m

SUMMER KING

第58回 札幌記念

ソダシ、パンサラッサといった超豪華メンバーが集結した真夏の祭典。大逃げを打つパンサラッサを番手でピタリとマークし、直線で力強く抜け出す。従来のイメージを覆す先行策で、G1馬5頭を完封してみせた。

RESULT
1st
RACE
RECORD
04
Osaka Hai 2023
9
2023.04.02 / 阪神 2000m

THE GLORY

第67回 大阪杯

レジェンド武豊を背に、再び訪れた淀の舞台。想定タイムとの誤差わずか0秒1という芸術的なラップ。スターズオンアースの猛追をハナ差で凌ぎ切った時、黄金の馬体は遂にG1の頂へと到達した。

1着 ジャックドール2着 スターズオンアース
DATA ANALYTICS

極限の
ラップ・コントロール

2023年大阪杯。主戦・武豊が描いた勝利への設計図は、前半1000mを「59秒0」で通過することだった。実際に彼が刻んだラップは58秒9。想定との誤差わずか0.1秒という神業的なペース配分が、最後にスターズオンアースの猛追をハナ差で封じ込める決定打となった。この精密な体内時計こそが、ジャックドールを真のG1馬へと昇華させた。

0.1s

TIME PRECISION

想定タイムとの誤差

※2023 大阪杯 (武豊騎手)

PACE CALCULATION

神の領域のラップ計測
TARGET PACE (PLAN)59.0
IDEAL LINE
ACTUAL PACE (JACK D'OR)58.9
PERFECT MATCH
ERROR MARGIN-0.1s
GENIUS ZONE
タイム誤差
JACK D'OR
結果を出せなかったのでもう乗れないのかと。
またチャンスをもらえたことが、本当に嬉しかった。
主戦騎手 武豊
2023年大阪杯 勝利インタビューより
息子(佑介)で大きいところを勝ちたい。
その思いがないと言えば、嘘になります。
調教師 藤岡健一
G1挑戦を控えたインタビューにて
FAN VOICES

ファンからの声

Y

四白流星の美しい馬体が先頭を駆け抜ける姿は、まさに「黄金」でした。武豊騎手とのコンビで掴んだG1、テレビの前で泣きました。

S

金鯱賞のレコードは現地で見ましたが、時計を見た瞬間、場内がどよめきました。あの持続力は他の馬には真似できません。

K

日高の小さな牧場から、これだけの怪物が出てくるのが競馬のロマン。種牡馬としても、そのスピードを伝えてほしいです。

BEHIND THE SCENES

秘蔵エピソード

黄金の馬体に秘められた、情熱と絆の物語

01

日高の誇り、クラウン日高牧場

ジャックドールは、日高町の小さな牧場「クラウン日高牧場」の出身。超巨大牧場が席巻する現代競馬において、日高の生産馬がG1を制することは、並大抵のことではない。セレクションセールで3,456万円という価格で取引された彼は、生産者の夢と希望を背負い、エリートたちを次々と破ってみせた「雑草魂」の象徴でもあった。

02

「金髪の貴公子」の由来

その輝くような栗毛と、顔にある大きな流星、そして足元の白い毛。あまりの美しさに、SNSでは「金髪の貴公子」という愛称が定着した。パドックに彼が現れると、カメラのシャッター音が一段と大きく響く。見た目の華やかさとは裏腹に、レースでは泥臭く先頭を譲らない。そのギャップが、多くのファンを虜にした理由だった。

Efforia
THE ARCHRIVAL
DESTINY

EFFORIA

エフフォーリア

2022年大阪杯。5連勝で勢いに乗るジャックドールと、年度代表馬エフフォーリアの「二強対決」に日本中が沸いた。エリート対新星。しかし、この一戦は両者にとって残酷な結果となる。エフフォーリアは9着、ジャックドールは5着。この挫折が、ジャックドールをより強く、より賢明な逃げ馬へと変え、後のG1制覇へと繋がる重要なマイルストーンとなった。

2022大阪杯
5thジャックドール
vs
9thエフフォーリア

輝き続けた逃亡者

輝き続けた逃亡者

競馬界において、「逃げ」とは最も過酷で、最も孤独な戦い方だ。後続のプレッシャーを受け続け、自らのスタミナを削りながら、たった一人で先頭を走り続ける。ジャックドールという馬は、その過酷な役割を自ら引き受け、誰よりも美しく、誰よりも力強く体現した存在だった。

日高の夢、父子の絆

父モーリス譲りの力強い馬体。しかし、その血統背景は決して「王道」ではなかった。サンデーサイレンスの血を持たない、異色の存在。それでも、藤岡健一調教師はその素質を見抜き、息子の藤岡佑介騎手と共に、一歩ずつ階段を登らせた。未勝利戦での9馬身差の圧勝から、金鯱賞でのレコード制覇。彼らの夢は、ジャックドールの輝く栗毛とともに、着実に形を成していった。

レジェンドとの邂逅

しかし、G1の壁は高く、厚かった。香港での大敗を経て、手綱はレジェンド武豊へと託される。武豊は、かつて自らが操ったサイレンススズカのような、「誰も追いつけない逃げ」をこの馬に求めたのではない。求めたのは、極限まで計算し尽くされた「精密機械」のような逃げだった。2023年大阪杯。淀の直線で二の脚を使い、必死に食らいつくスターズオンアースを振り切った瞬間、長きにわたる挑戦は最高の結末を迎えた。

黄金のレガシー

通算17戦8勝。そのキャリアの大半を2000mという中距離に捧げ、逃げの一手で戦い抜いた。屈腱炎という無情な宣告によりターフを去ることになったが、その瞳には、常に先頭だけを見つめてきた誇りが宿っていた。今、彼は種牡馬として新たな旅に出ている。彼の子供たちが、再び黄金の馬体を揺らし、ターフで誰よりも速く駆け抜けるその日まで。ジャックドールの物語は、終わることのない伝説として語り継がれるだろう。

「彼は逃げ馬としてのプライドを持っていた。最後まで脚を伸ばすその姿に、私も勇気をもらった」
――武豊

黄金の閃光、ジャックドール。君が駆け抜けた1分57秒の静寂と熱狂を、私たちは一生忘れない。