Bathrat Leon

The VoyagerBathrat Leon

「どこまでも、逃げ切ってやる。」
砂と芝、海を越えた二刀流の矜持。

PROFILE

生誕2018.03.25
調教師矢作芳人 (栗東)
主戦騎手坂井瑠星
通算成績29戦5勝 [5-0-5-19]
主な勝鞍ゴドルフィンマイル (G2)
1351ターフスプリント (G3)
ニュージーランドトロフィー (G2)
3歳1勝クラス、2歳新馬

PEDIGREE

FATHER
キズナ
(日本) 2010
ディープインパクト
キャットクイル
×
MOTHER
バスラットアマル
(英) 2010
New Approach
Zahrat Dubai

父は世代の頂点に立ったダービー馬、母の父は欧州の至宝ガリレオ系。世界のスピードと日本の持続力が融合した血統背景が、芝・ダートを問わず先頭を奪い去る強靭な先行力を生み出した。

CAREER RECORD

全レース成績

TOTAL: 29 RUNS5 - 0 - 5 - 19
DATERACE NAMECOURSE / DIST.JOCKEYRESULT
2024.11.04JBCスプリント (G1)佐賀/ダ1400m古川奈穂8th
2024.10.19富士ステークス (G2)東京/芝1600m吉田豊17th
2024.07.07プロキオンステークス (G3)小倉/ダ1700m坂井瑠星16th
2024.06.19さきたま杯 (G1)浦和/ダ1400m内田博幸7th
2024.02.241351ターフスプリント (G2)サウジ/芝1351m坂井瑠星10th
2023.11.19マイルチャンピオンシップ (G1)京都/芝1600m鮫島克駿15th
2023.11.03JBCスプリント (G1)大井/ダ1200mJ.モレイラ7th
2023.09.10コリアスプリント (G3)韓国/ダ1200m坂井瑠星3rd
2023.05.31さきたま杯 (G2)浦和/ダ1400m坂井瑠星3rd
2023.03.25ゴドルフィンマイル (G2)メイダン/ダ1600m坂井瑠星4th
2023.02.251351ターフスプリント (G3)サウジ/芝1351m坂井瑠星1st
2022.12.24阪神カップ (G2)阪神/芝1400m川田将雅4th
2022.11.12武蔵野ステークス (G3)東京/ダ1600m坂井瑠星3rd
2022.08.14ジャックルマロワ賞 (G1)仏国/芝1600m坂井瑠星7th
2022.07.27サセックスステークス (G1)英国/芝1600m坂井瑠星4th
2022.03.26ゴドルフィンマイル (G2)メイダン/ダ1600m坂井瑠星1st
2022.01.05京都金杯 (G3)中京/芝1600m坂井瑠星9th
2021.11.13武蔵野ステークス (G3)東京/ダ1600m菅原明良13th
2021.10.23富士ステークス (G2)東京/芝1600m坂井瑠星12th
2021.09.12京成杯AH (G3)中山/芝1600m藤岡佑介15th
2021.05.30東京優駿 (G1)東京/芝2400m藤岡佑介15th
2021.05.09NHKマイルカップ (G1)東京/芝1600m藤岡佑介中止
2021.04.10ニュージーランドT (G2)中山/芝1600m藤岡佑介1st
2021.03.133歳1勝クラス阪神/芝1600m古川奈穂1st
2021.01.10シンザン記念 (G3)中京/芝1600m坂井瑠星3rd
2020.12.20朝日杯FS (G1)阪神/芝1600m坂井瑠星4th
2020.11.28京都2歳ステークス (G3)阪神/芝2000m坂井瑠星6th
2020.09.05札幌2歳ステークス (G3)札幌/芝1800m坂井瑠星3rd
2020.07.262歳新馬札幌/芝1800m藤岡佑介1st
CAREER HIGHLIGHTS

不撓不屈の逃走劇

01
NZT Winner
3-6
2021.04.10 / 中山 1600m

THE DOMINATION

第39回 ニュージーランドT

単勝1番人気の期待に応え、迷いなき逃げの手に出た。直線入り口でも手応えは抜群。後続が必死に追いすがる中、悠々と突き放し5馬身差の圧勝。重賞初制覇とともに、世代屈指のスピード能力を全国のファンへ鮮烈に印象付けた。

MARGIN
5 len
TIME
1:33.1
02
NHK Mile Cup Tragedy
2
2021.05.09 / 東京 1600m

SUDDEN TRAGEDY

第26回 NHKマイルカップ

頂点へ最も近かった日、悪夢はスタート直後に起きた。ゲートを出た瞬間につまずき、鞍上の藤岡騎手が落馬。場内は悲鳴に包まれた。誰よりも速く駆け抜けるはずだったターフで、ポツンと一人走り続けた彼の背中に、競馬の厳しさと残酷さが刻まれた。

競走中止落馬によるアクシデント
03
Godolphin Mile Winner
8
2022.03.26 / メイダン 1600m

GLOBAL TRIUMPH

ゴドルフィンマイル

1年近く勝ち星から遠ざかり、伏兵扱いされたドバイの地。しかし坂井騎手とのコンビは迷わずハナを叩いた。異国の砂を蹴立て、粘りに粘る。世界の強豪を完封し、16年ぶりの日本馬制覇。不振のトンネルを抜け出し、彼は「世界のバスラット」へと進化した。

COUNTRY
DUBAI
RESULT
1st
04
Last Run
12
2024.11.04 / 佐賀 1400m

ETERNAL FAREWELL

第24回 JBCスプリント

引退レース。その背には、若き日に勝利を分かち合った古川奈穂騎手の姿があった。古川騎手にとってのG1級初騎乗。最後まで彼らしく、泥を被りながらも前を追い続けた8着。29戦を戦い抜いた鉄の馬が、愛する騎手に新たな夢を託してターフを去った。

8着 バスラットレオンラストラン・引退
DATA ANALYTICS

飽くなき
世界への挑戦

バスラットレオンの真価は、その圧倒的なタフネスと適応力にある。日本のみならず、イギリス、フランス、ドバイ、サウジアラビア、韓国と世界6カ国を渡り歩いた。芝・ダートを問わず、どんな環境でも自身のスタイルである「逃げ」を貫き通す精神力は、まさに現代競馬における「真の冒険者」と呼ぶにふさわしい実績である。

6 COUNTRIES

GLOBAL VERSATILITY

遠征した国と地域の数

※日本、英、仏、沙、首、韓

TRACK ADAPTABILITY

二刀流の証明
TURF WINS3 WINS
NZT / 1351 / NEW
DIRT WINS2 WINS
GODOLPHIN / 1WIN
OVERSEAS EXPEDITIONS7 RUNS
WORLD WIDE TRAVELER
遠征頻度の高さ
BATHRAT
芝もダートもいける、
大谷翔平のような二刀流だ。
調教師 矢作芳人
公式コメントより
私にとって、
特別で思い入れのある一頭。
騎手 古川奈穂
引退レース直前インタビューにて
FAN VOICES

ファンからの声

D

メイダンの砂を真っ先に駆け抜ける姿に震えました。日本では馬券が買えなかったけど、勝利の瞬間はそんなことどうでもよくなるくらい嬉しかった!

H

NHKマイルの落馬から、まさかこれほど世界を飛び回る馬になるとは。ラストランに古川騎手が乗ってくれたのも、この馬らしい物語の締めくくりでした。

K

パンサラッサの陰に隠れがちですが、バスラットレオンこそ矢作厩舎の「開拓者精神」を象徴する馬。彼の逃げにはいつも勇気をもらいました。

BEHIND THE SCENES

秘蔵エピソード

鉄の馬が見せた、一途で数奇な物語

01

「幻」の万馬券

2022年のゴドルフィンマイル。約1年ぶりの勝利を海外で挙げたが、当時はJRAでの馬券発売がなかった。一方、海外のブックメーカーでは単勝67倍という超低評価。現地で信じて賭けたファンは大金を手にしたが、日本のファンは「なぜ売ってくれなかったんだ」と嬉しい悲鳴を上げることとなった。

02

古川騎手との絆

3歳時、当時新人だった古川奈穂騎手を背に勝利を挙げ、彼女に初勝利をもたらしたのがバスラットレオンだった。それから3年半、数多の国を巡った歴戦の勇士は、自身のラストランに再び古川騎手を指名。彼女に「G1級初騎乗」という最高のプレゼントを託して、自身の物語を完結させた。

Panthalassa
THE BROTHER
CONTRAST

PANTHALASSA

パンサラッサ

同じ厩舎、同じ馬主、そして同じ「逃げ馬」。常に一歩前を行く兄貴分のような存在。パンサラッサが芝・ダートの頂点を極める一方で、バスラットレオンはその陰に隠れながらも、独自の道を切り拓いた。

G1の称号こそ手に届かなかったが、バスラットが海外の重賞を制すことで、厩舎全体の「世界挑戦」への確信はより深まった。二頭の個性的な逃げ馬が共存したあの数年間は、矢作厩舎の黄金時代そのものだったと言える。

交わることのない個性の火花。一方は世界の王となり、一方は世界の旅人となった。

2022-2023YAHAGI STABLE DUO
G2/G3バスラットレオン
vs
G1/G1パンサラッサ

泥と砂を纏った旅人

泥と砂を纏った旅人

バスラットレオンという競走馬のキャリアは、決して平坦なエリートコースではなかった。むしろ、期待と絶望、そして再生を繰り返す、一篇のロードムービーのような物語である。彼は常に前を向き、誰にも邪魔されない先頭の景色を追い求め、海を渡り続けた。

悪夢、そして暗転

2021年のNHKマイルカップ。ニュージーランドトロフィーで見せた5馬身差の圧勝から、彼は「新時代の逃げ馬」として、誰よりも大きな期待を背負って東京競馬場のゲートに入った。しかし、ファンが目にしたのは歓喜のゴールではなく、スタート直後の落馬という残酷な結末だった。一人で空しく駆け抜ける彼の背中は、それから長い不振のトンネルを暗示しているかのようだった。勝てない日々が続き、かつての輝きは薄れ、「早熟の逃げ馬」というレッテルが貼られようとしていた。

異国の砂、再生の咆哮

転機は、誰もが彼を忘れかけていた2022年のドバイ。メイダン競馬場の乾いた砂の上だった。人気薄。格上の強豪たち。だが、バスラットレオンは臆することなく先頭に立った。鞍上の坂井瑠星と呼吸を合わせ、泥臭く、執念深く粘り込む。ゴール板を駆け抜けた瞬間、日本の競馬界は驚愕に包まれた。1年ぶりの勝利が世界の重賞。あの落馬から始まった悪夢を、彼は自らの脚で、異国の砂の上で振り払ったのだ。この日、彼は単なる「逃げ馬」から、世界のどんな環境でも戦い抜ける「ボイジャー(航海者)」へと進化した。

託されたバトン

その後もイギリス、フランス、韓国と、彼は世界地図を広げるように走り続けた。勝利の数以上に、そのタフな挑戦姿勢は多くの競馬ファンの心を掴んだ。そして迎えた2024年のラストラン。彼の背中には、かつて初勝利を共に分かち合った古川奈穂騎手がいた。世界を知るベテラン馬が、これからを担う若き女性騎手をエスコートするように、佐賀の地方競馬場を泥だらけになって駆け抜けた。その姿には、勝敗を超えた「教育」と「愛」が溢れていた。数字だけでは測れない、記憶の中に深く刻まれる逃走劇。バスラットレオンが遺した轍は、次の世代へと続く勇気の道標となるだろう。

「彼は僕に初めての海外重賞をプレゼントしてくれた、特別な馬です」
―― 坂井瑠星

通算29戦。その一歩一歩が、日本競馬の可能性を広げる壮大な旅路だった。バスラットレオン。彼はもう先頭を走る必要はない。これからは静かな牧場で、かつて駆け抜けた世界中の風を思い出しながら、その誇り高き蹄音を歴史に刻み続ける。