スマートファルコン:砂のサイレンススズカ
Smart Falcon

The SpeedsterSmart Falcon

「砂のサイレンススズカ」
その蹄音が、時代を置き去りにした。

PROFILE

生誕2005.04.04
調教師小崎憲 (栗東)
主戦騎手武豊 / 岩田康誠
通算成績34戦23勝 [23-4-1-6]
主な勝鞍東京大賞典 (G1) 2連覇
JBCクラシック (Jpn1) 2連覇
帝王賞 (Jpn1)
川崎記念 (Jpn1)

PEDIGREE

FATHER
ゴールドアリュール
(日本) 1999
サンデーサイレンス
ニキーヤ
×
MOTHER
ケイシュウハーブ
(日本) 1988
ミシシッピアン
キョウエイハーブ

父はダート界の至宝、母系には東京大賞典馬の半兄を持つ砂の超良血。サンデーサイレンス系の瞬発力と、ダートでこそ輝く泥臭いパワーが見事に融合し、唯一無二のスピード持久力を手に入れた。

CAREER RECORD

全レース成績

TOTAL: 34 RUNS23 - 4 - 1 - 6
DATERACE NAMECOURSE / DIST.JOCKEYRESULT
2012.03.31ドバイワールドカップ (G1)メイダン / ダ2000m武豊10th
2012.01.25川崎記念 (Jpn1)川崎 / ダ2100m武豊1st
2011.12.29東京大賞典 (G1)大井 / ダ2000m武豊1st
2011.11.03JBCクラシック (Jpn1)大井 / ダ2000m武豊1st
2011.09.23日本テレビ盃 (Jpn2)船橋 / ダ1800m武豊1st
2011.06.29帝王賞 (Jpn1)大井 / ダ2000m武豊1st
2010.12.29東京大賞典 (G1)大井 / ダ2000m武豊1st
2010.11.03JBCクラシック (Jpn1)船橋 / ダ1800m武豊1st
2008.07.09ジャパンダートダービー (Jpn1)大井 / ダ2000m岩田康誠2nd
2007.10.282歳新馬東京 / 芝1600m横山典弘1st
CAREER HIGHLIGHTS

逃亡者の覚醒

01
JBC Classic 2010
2-3
2010.11.03 / 船橋 1800m

THE AWAKENING

第10回 JBCクラシック

武豊とのコンビ2戦目、臆病な性格を逆手に取った「マイペース逃げ」が爆発する。宿敵フリオーソを直線で突き放し、終わってみれば7馬身差という衝撃的な圧勝。砂の王者がその真の力を解き放った伝説の始まり。

MARGIN
7 Lengths
RESULT
Win
02
Tokyo Daishoten 2010
8
2010.12.29 / 大井 2000m

DIMENSION SHIFT

第56回 東京大賞典

1コーナーから最終直線まで、他馬に影すら踏ませない一人旅。電光掲示板に刻まれた「2:00.4」という数字に、場内は静まり返った。従来の日本レコードを0.6秒も短縮する、ダート競馬の歴史を塗り替えた大記録。

1着 スマートファルコン2着 フリオーソ
03
Teio Sho 2011
1-1
2011.06.29 / 大井 2000m

ABSOLUTE KING

第34回 帝王賞

「誰が彼を止めるのか」。そんな疑問に答えるように、再び別次元の走りを見せる。エスポワールシチーら強豪を相手に、直線だけでみるみると差を広げ、9馬身差の大独走。もはや国内に敵なしを印象付けた独演会。

MARGIN
9 Lengths
ODDS
1.2
04
Tokyo Daishoten 2011
12
2011.12.29 / 大井 2000m

THE GLORY

第57回 東京大賞典

猛追するワンダーアキュートをハナ差で凌ぎきった死闘。圧倒的なスピードだけでなく、勝負根性すらも一級品であることを証明した。年間無敗のまま、自らが持つ日本レコードに迫るタイムで連覇を達成。

1着 スマートファルコン2着 ワンダーアキュート
DATA ANALYTICS

不滅の
ダート日本レコード

2010年の東京大賞典。武豊騎手に導かれた彼は、大井の深い砂をまるで芝の上を駆けるかのような軽やかさで進んだ。刻まれたタイムは2分00秒4。従来の日本レコードを0.6秒、コースレコードを1.7秒も塗り替える異次元の記録だった。この時計は、その後10年以上もの間、ダート2000mにおける絶対的な「基準」として君臨し続けている。

2:00.4

JAPAN RECORD

2000m 走破時計

※2010 東京大賞典

SPEED DOMINATION

砂の常識を変えた記録
PREVIOUS RECORD2:01.0
PAST ERA
SMART FALCON2:00.4
NEW FRONTIER
TIME REDUCTION-0.6s
SPEED GAP
タイム短縮幅
SMART FALCON
まさに砂のサイレンススズカ。
彼なら世界を獲れると思っていた。
主戦騎手 武豊
インタビューより
怖がりで繊細な性格。
だからこそ、誰もいない先頭を目指した。
調教師 小崎憲
引退に寄せて
FAN VOICES

ファンからの声

S

あの東京大賞典のレコードは一生忘れない。直線で後続を突き放した時のスピードは、ダートのそれじゃなかった。本物の怪物だと思った。

T

単勝1.0倍を何度も背負い、そのすべてで完璧な逃げ切りを見せる。あのプレッシャーの中で勝ち続けるメンタルには、ただただ脱帽するしかなかった。

F

最近ファンになったけど、現役時代のレース動画を見て衝撃を受けました。泥を一切被らずに駆け抜ける姿は、まさにアイドルのような美しさでした。

BEHIND THE SCENES

秘蔵エピソード

砂を支配した王者が見せた、素顔の瞬間

01

臆病ゆえの「逃亡」

実は非常に臆病な性格だったスマートファルコン。他馬が近くにいると怖がってしまい、折り合いを欠くことも多かった。その弱点を「誰もいない先頭に逃げる」という最強の武器に変えたのが武豊騎手だった。「怖いから前に行く」という本能が、史上空前の逃げ馬を生んだのだ。

02

地方競馬の「巡業王者」

一時期は賞金を稼ぐために地方競馬の重賞を渡り歩き、「地方荒らし」と呼ばれることもあった。しかし、どこの競馬場へ行っても最高のパフォーマンスを見せ、地元のファンを沸かせるその姿は、いつしか「砂の伝道師」として愛されるように。彼の蹄跡は、日本中のダートコースに刻まれている。

Furioso
THE ARCHRIVAL
DESTINY

FURIOSO

フリオーソ

スマートファルコンが砂の王座を盤石にするために、常に超えなければならなかった壁。それが地方競馬の誇り、フリオーソだった。

2010年、武豊を背にしたスマートファルコンが覚醒を果たすまで、フリオーソはダート界の絶対的な君主だった。日本テレビ盃で屈辱の敗戦を喫したことで、王者の闘争心に火がつく。その後、JBCクラシックでの7馬身差圧勝、そしてレコードを叩き出した東京大賞典。常に2着にはフリオーソがいた。

激闘を繰り広げた両雄の対決は、ダート競馬が最も熱く、最も美しかった時代の象徴である。

2010東京大賞典
1stスマートファルコン
vs
2ndフリオーソ

砂塵の先に見た夢

砂塵の先に見た夢

スマートファルコンの物語は、挫折から始まった。当初期待された芝のクラシック戦線。しかし皐月賞で味わった最下位という屈辱が、彼の運命を砂の道へと大きく舵を切らせることになる。それは「天才」と呼ばれたサラブレッドが、自らの居場所を探して泥にまみれ、最強へと這い上がる再生の物語だった。

武豊という、最後のピース

ダート転向後、地方重賞を勝ちまくっても、どこか「最強」の二文字は遠かった。繊細で、臆病で、他馬を怖がる心。その内面を見抜いたのが、稀代の魔術師・武豊だった。「無理に抑えるのではなく、馬の行きたいスピードで走らせる」。そのシンプルな、しかし誰も成し得なかった決断が、眠っていた怪物を目醒めさせた。船橋のJBCクラシックで見せた7馬身差の独走は、新たな伝説の号砲だった。

誰も追いつけない、異次元の領域

2011年、日本中の競馬場を巡りながら、彼は一度も負けなかった。単勝オッズ1.0倍。絶対に勝たなければならないという極限の重圧を背負い、彼はただ、淡々と先頭を駆け抜けた。2000mを2分0秒4で走り抜けたあの日、彼は砂の競馬が持つ「速度」の概念を根底から覆した。泥を跳ね上げる後続を置き去りにし、静寂の中に響く自らの蹄音だけを聞きながら走る姿。それは、かつて天才・武豊が愛した「サイレンススズカ」の残影と重なっていた。

未完の夢、そして未来へ

ドバイワールドカップ。世界一を夢見て挑んだ異国の地で、待っていたのはゲートへの激突、そして出遅れという無情な結末だった。怪我によって突如として幕を閉じた現役生活。しかし、彼の物語は終わらない。種牡馬となった彼は、自らと同じスピードを受け継ぐ産駒たちを次々とターフへ送り出している。
砂塵の彼方へ消えていったあの日の背中。私たちは今も、ダートコースに風が吹くたび、あの圧倒的なスピードの記憶を思い出す。スマートファルコン。彼は間違いなく、砂の上に革命を起こした、唯一無二の表現者だった。

「彼は自分のリズムで走っている時は、誰にも負けない。世界一のスピードを持っていた」
――武豊

通算34戦23勝。平地重賞19勝という不滅の金字塔。その数字以上に、彼が日本中のファンに与えた勇気と感動は計り知れない。弱さを強さに変え、地方から世界を夢見た逃亡者の伝説は、これからも砂塵と共に語り継がれていく。