ダイワスカーレット:ミス・パーフェクトの軌跡
Daiwa Scarlet

Miss Perfect Daiwa Scarlet

「敗北」を知らぬまま、
彼女は伝説となった。

PROFILE

生誕2004.05.13
調教師松田国英 (栗東)
主戦騎手安藤勝己
通算成績12戦8勝 [8-4-0-0]
主な勝鞍有馬記念 (G1)
桜花賞 (G1)
秋華賞 (G1)
エリザベス女王杯 (G1)

PEDIGREE

FATHER
アグネスタキオン
(日本) 1998
サンデーサイレンス
アグネスフローラ
×
MOTHER
スカーレットブーケ
(日本) 1988
ノーザンテースト
スカーレットインク

父は「幻の三冠馬」アグネスタキオン。母は重賞4勝の名牝で、日本屈指の牝系「スカーレット一族」の柱石。天賦のスピードと、代々受け継がれた勝負根性が融合し、一分の隙もない絶対女王が完成した。

CAREER RECORD

全レース成績

TOTAL: 12 RUNS 8 - 4 - 0 - 0
DATERACE NAMECOURSE / DIST.JOCKEYRESULT
2008.12.28有馬記念 (G1)中山 / 芝2500m安藤勝己1st
2008.11.02天皇賞・秋 (G1)東京 / 芝2000m安藤勝己2nd
2008.04.06産経大阪杯 (G2)阪神 / 芝2000m安藤勝己1st
2007.12.23有馬記念 (G1)中山 / 芝2500m安藤勝己2nd
2007.11.11エリザベス女王杯 (G1)京都 / 芝2200m安藤勝己1st
2007.10.14秋華賞 (G1)京都 / 芝2000m安藤勝己1st
2007.09.16ローズS (G2)阪神 / 芝1800m安藤勝己1st
2007.04.08桜花賞 (G1)阪神 / 芝1600m安藤勝己1st
2007.03.03チューリップ賞 (G3)阪神 / 芝1600m安藤勝己2nd
2007.01.08シンザン記念 (G3)京都 / 芝1600m安藤勝己2nd
2006.12.16中京2歳S (OP)中京 / 芝1800m安藤勝己1st
2006.11.192歳新馬京都 / 芝2000m安藤勝己1st
CAREER HIGHLIGHTS

常勝の美学

01
Oka Sho
8-18
2007.04.08 / 阪神 1600m

THE FIRST DUEL

第67回 桜花賞

宿敵ウオッカとの二度目の対戦。前哨戦の敗北を糧に、彼女は驚異的な進化を遂げていた。抜群の手応えで直線に入ると、迫りくるライバルを完封。クビ差の勝利以上に、彼女が放つ「負けない」という強い意志がターフを支配した。名牝の時代が、ここから幕を開けた。

TIME
1:33.7
LAST 3F
34.8
02
Shuka Sho
7
2007.10.14 / 京都 2000m

QUEEN ASCENDANT

第12回 秋華賞

故障による休養を乗り越え、ひと回り逞しくなった姿で現れた秋。力強く逃げる彼女に、ウオッカら強豪たちが襲いかかるも、二の脚で突き放す圧倒的な横綱相撲。牝馬二冠の達成。それは、彼女の能力が世代を超越していることを証明する残酷なまでの強さだった。

1着 ダイワスカーレット2着 レインダンス
03
Tenno Sho Autumn
4-7
2008.11.02 / 東京 2000m

ETERNAL 2CM

第138回 天皇賞(秋)

日本競馬史上最高の一戦。自ら作り出した超ハイペースの中、直線で一度はウオッカに抜き去られながら、驚異の勝負根性で差し返した。13分に及ぶ写真判定。結果はわずか2cm差の2着。敗北すらも神話へと変えた、魂を揺さぶる歴史的死闘だった。

TIME
1:57.2
GAP
2cm
04
Arima Kinen
1
2008.12.28 / 中山 2500m

PERFECT FINALE

第53回 有馬記念

37年ぶりの牝馬制覇という重圧を背負いながら、彼女は最初から最後まで先頭を譲らなかった。2番手以下を翻弄する変幻自在のラップ。直線でさらに突き放す独走劇。これが「ミス・パーフェクト」の最終章。日本中の視線を背に、彼女は完璧なままターフを去った。

1着 ダイワスカーレット2着 アドマイヤモナーク
DATA ANALYTICS

究極の
生涯連対率100%

ダイワスカーレットの偉大さを語る上で欠かせないのが、出走した全12戦において一度も3着以下に沈まなかった驚異の安定感である。これはJRA史上、19戦無敗・連対のシンザンに次ぐ歴代2位の記録。いかなる距離、馬場状態、そしてライバルを前にしても、彼女は必ず「勝負の圏内」に居続けた。この数字こそが、彼女を「完璧」と呼ばしめる最大の根拠である。

100.0%

PLACEMENT RATE

生涯連対率(全12戦)

※1着8回 / 2着4回

HISTORICAL COMPARISON

歴史的名馬の連対記録
SHINZAN (19 runs)100%
THE LEGEND
DAIWA SCARLET (12 runs)100%
MISS PERFECT
VODKA (26 runs)57.6%
THE RIVAL
生涯連対達成
SCARLET
とにかく走る気が満々で、
負ける気がしなかった。
主戦騎手 安藤勝己
勝利インタビューより
これほどの馬を、
無傷で繁殖に返せる喜びを感じる。
調教師 松田国英
引退会見にて
FAN VOICES

ファンからの声

S

2008年の有馬記念、あの赤いメンコが先頭で突き抜けた瞬間は涙が止まりませんでした。トウメイ以来の快挙を、あんなに強い勝ち方で見せてくれるなんて。

A

天皇賞秋。ウオッカとの鼻差2センチ。あの13分間、競馬場全体が震えていた。負けてなお「最強」を感じさせたのは、後にも先にも彼女だけです。

U

ウマ娘で彼女を知り、実際のレース動画を見て衝撃を受けました。アニメ以上のドラマが現実のダイワスカーレットにはあったんですね。

BEHIND THE SCENES

秘蔵エピソード

「完璧」な彼女が見せた、一瞬の素顔と情熱

01

父の悲願を背負って

父アグネスタキオンは「幻の三冠馬」と呼ばれ、志半ばでターフを去った。ダイワスカーレットの勝負根性は、父が走りたかった未来への渇望だったのかもしれない。彼女がG1を勝つたびに、ファンはそこにタキオンの閃光の続きを見ていた。

02

安藤勝己が語る「野生」

安藤騎手は彼女を「おとなしいが、ゲートが開くと野獣になる」と評した。普段は優等生のように振る舞いながら、競り合いになると相手を捩じ伏せるまで止まらない。そのオンとオフの切り替えこそが、彼女がミス・パーフェクトと呼ばれる所以だった。

Vodka
THE ARCHRIVAL
DESTINY

VODKA

ウオッカ

同じ年、同じ月に生まれ、異なる道を歩みながら常に高め合った宿命のライバル。ダービーを制したウオッカの豪脚と、全てを完封するスカーレットの先行力。対戦成績3勝2敗。彼女たちが競演する舞台は、常に「牝馬の時代」という言葉では足りないほどの熱量に満ちていた。2008年天皇賞(秋)で刻まれた「2cm」の差は、日本競馬史が到達した一つの臨界点だったといえるだろう。

2008TENNO SHO (AUTUMN)
1stウオッカ
vs
2ndダイワスカーレット

完璧という名の、孤独な疾走

完璧という名の、孤独な疾走

12戦、全て連対。その数字が物語るのは、単なる能力の高さではない。一歩も引かない、誰にも前を譲らないという、気高いまでの自尊心である。ダイワスカーレット。彼女が駆け抜けた2000年代後半は、日本競馬が「牝馬の時代」へと大きく舵を切った歴史的転換期であった。その中心で、彼女は常に赤いメンコをなびかせ、圧倒的な先行力でライバルたちを絶望させてきた。

「幻の三冠馬」の血が騒ぐ

彼女の物語は、父アグネスタキオンが果たせなかった夢の続きでもあった。四戦無敗で皐月賞を制しながら、怪我に泣いた父。その天賦のスピードと、脆さと背中合わせの爆発力を受け継いだ彼女は、デビューから一気に頂点へと駆け上がる。しかし、春のオークスを感冒で回避するなど、彼女の歩みも決して平坦ではなかった。だからこそ、秋に見せたあの「常勝」の姿は、血の宿命を塗り替えようとする執念のようにさえ見えたのだ。

2センチメートルの残像

多くのファンが彼女を語るとき、避けて通れないのが2008年の天皇賞(秋)だ。宿敵ウオッカとの一騎打ち。直線、一度は完全に抜け出された。普通ならそこで終わる。しかし彼女はそこから差し返した。ゴール板、二頭の鼻面は完全に入れ替わっていた。わずか2cmの差で敗れたとき、彼女が見せた表情は、敗北の悔しさよりも、全力を出し切った者だけが持つ神々しさに満ちていた。あの瞬間、彼女は「完璧」を超えて「伝説」となった。

美しき幕引き、そして母へ

引退レースとなった有馬記念。彼女は影すら踏ませぬ逃げ脚で、中山の直線を独走した。2分31秒5。前年の自身を凌駕するタイムで、37年ぶりの牝馬制覇を成し遂げた。その後、故障により突然の引退。100%の連対記録を保持したままターフを去る姿は、あまりにも潔く、そして美しかった。彼女は今、母としてその血を次世代へ繋いでいる。彼女が残した「完璧」という名の軌跡は、これからも色褪せることなく、日本競馬の至宝として語り継がれていくだろう。

「彼女ほど負ける姿を想像できない馬はいなかった」
―― 多くのファンが共有する、唯一無二の記憶

私たちは忘れない。常に最前列で風を切り、ライバルたちの挑戦を真っ向から受け止めた、あの誇り高き栗毛の女王を。ダイワスカーレット。彼女が示したのは、速さだけではない。「負けない」ことの難しさと、それを成し遂げ続けた者にだけ許される、気高き美学だったのである。