Kurofune

The ImpactKurofune

「黒船」がもたらしたのは、
日本競馬の開国だった。

PROFILE

生誕1998.03.31
調教師松田国英 (栗東)
主戦騎手武豊
通算成績10戦6勝 [6-1-2-1]
主な勝鞍ジャパンカップダート (G1)
NHKマイルカップ (G1)
武蔵野ステークス (G3)
毎日杯 (G3)

PEDIGREE

FATHER
フレンチデピュティ
(USA) 1992
Deputy Minister
Mitterand
×
MOTHER
ブルーアヴェニュー
(USA) 1990
Classic Go Go
Eliza Blue

父は米国で活躍したヴァイスリージェント系、母父はテキサスで知る人ぞ知る存在だった。主流血統を持たない「異端」の血が、日本競馬の常識を覆す異次元のスピードとパワーを呼び覚ました。

CAREER RECORD

全レース成績

TOTAL: 10 RUNS6 - 1 - 2 - 1
DATERACE NAMECOURSE / DIST.JOCKEYRESULT
2001.11.24ジャパンカップダート (G1)東京 / ダ2100m武豊1st
2001.10.27武蔵野ステークス (G3)東京 / ダ1600m武豊1st
2001.09.23神戸新聞杯 (G2)阪神 / 芝2000m蛯名正義3rd
2001.05.27東京優駿 (G1)東京 / 芝2400m武豊5th
2001.05.06NHKマイルカップ (G1)東京 / 芝1600m武豊1st
2001.03.24毎日杯 (G3)阪神 / 芝2000m四位洋文1st
2000.12.23ラジオたんぱ杯3歳S (G3)阪神 / 芝2000m松永幹夫3rd
2000.12.03エリカ賞 (500万下)阪神 / 芝2000m松永幹夫1st
2000.10.283歳新馬京都 / 芝2000m松永幹夫1st
2000.10.143歳新馬京都 / 芝1600m松永幹夫2nd
CAREER HIGHLIGHTS

白き怪物の伝説

01
NHK Mile Cup
2-4
2001.05.06 / 東京 芝1600m

THE SPEED

第6回 NHKマイルカップ

単勝1.2倍という圧倒的な支持に応え、異次元の末脚を披露。当時の日本レコードとなる1分33秒0を叩き出し、世代最強のスピードを証明した。武豊騎手に「これほど強い馬はいない」と言わしめた、最初の衝撃。

TIME
1:33.0
LAST 3F
34.3
02
Musashino Stakes
8-15
2001.10.27 / 東京 ダ1600m

DIRT SHOCK

第6回 武蔵野ステークス

天皇賞除外により急遽向かった初ダート。そこには誰も見たことのない景色が広がっていた。2着を9馬身突き放す独走、そしてダート1600mで芝並みの1分33秒3という驚異的レコード。砂の王者の覚醒である。

1着 クロフネ2着 イーグルカフェ
03
Japan Cup Dirt
5-9
2001.11.24 / 東京 ダ2100m

WORLD CLASS

第2回 ジャパンカップダート

世界の強豪を子ども扱いにする、歴史的な圧勝。直線だけで後続を7馬身ちぎり捨て、2分5秒9という驚天動地のレコードを樹立した。その差は1.3秒。ダート競馬における「究極」がそこに体現されていた。

TIME
2:05.9
MARGIN
7 lengths
DATA ANALYTICS

破壊的な
レコード更新

2001年のジャパンカップダートで見せた走りは、単なる勝利ではなかった。従来のレコードを1.3秒も短縮する、物理法則を無視したかのような走りだった。2着ウイングアローは当時のダート王だったが、その王者に7馬身の絶望的な差を見せつけた。この記録は東京ダート2100mにおける伝説として語り継がれている。

2:05.9

TRACK RECORD

ダ2100m 走破時計

※2001 ジャパンCダート

SPEED COMPARISON

異次元のタイム差
PREVIOUS RECORD2:07.2
AVERAGE BEST
KUROFUNE (2001)2:05.9
KUROFUNE ZONE
TIME REDUCTION-1.3s
SHOCK WAVE
1.3秒という絶望的な差
KUROFUNE
これまでに多くの馬に乗りましたが、
今日に関しては、これほど強い馬はいなかった。
主戦騎手 武豊
NHKマイルC 勝利後インタビューより
この馬は、いつまでも
私たちの記憶に残る存在です。
調教師 松田国英
クロフネ逝去時のコメントより
FAN VOICES

語り継がれる衝撃

S

武蔵野SとJCダート。あの2戦は、競馬の常識が音を立てて崩れた瞬間でした。一頭だけ別の生き物が走っているような、圧倒的な暴力的なまでの強さ。一生忘れられません。

R

カレンチャンやソダシ、そして母父としてクロノジェネシス。彼が残した血の広がりを見るたびに、あの白い馬体が砂の上で見せた輝きを思い出します。真の偉大な種牡馬です。

H

NHKマイルCのレコードも凄かった。芝でも最強クラスだった彼が、ダートでさらにその上を行く。あんな馬、後にも先にもクロフネだけじゃないでしょうか。

BEHIND THE SCENES

開国への秘話

歴史を動かした運命の悪戯と、その素顔

01

「除外」という名の運命

本来、クロフネの目標は天皇賞・秋だった。しかし外国産馬の出走枠に入れず、無念の除外。やむなく前日の武蔵野S(ダート)へ向かったことが、伝説の幕開けとなった。もし天皇賞に出走できていたら、私たちは「砂の怪物」を知らないままだったかもしれない。

02

武豊を驚愕させた加速

武蔵野Sの直線。武豊騎手はターフビジョンで後続との差を何度も確認した。「勝つためではなく、どれだけ離せるか試した」と語るほどの独走劇。検量室に戻った名手の顔には、驚きを通り越して、あまりの強さに呆れたような笑みが浮かんでいたという。

Jungle Pocket
THE RIVAL
ETERNAL RIVAL

JUNGLE POCKET

ジャングルポケット

最強世代と呼ばれた1998年産。その中心にいたのが、府中2400mの王者ジャングルポケットだ。日本ダービーでは、クロフネの夢を打ち砕く豪脚を披露。常に比較され、切磋琢磨した二頭。芝の王道を守り抜いた「ジャンポケ」に対し、クロフネは砂の王道を開拓した。対照的な道を歩んだ両雄の激突は、日本競馬の黄金時代を象徴する一幕だった。

2001東京優駿
5thクロフネ
vs
1stジャングルポケット

白き航跡の彼方に

白き航跡の彼方に

2001年、日本競馬界には「黒船」が来航した。その馬の名はクロフネ。芦毛の美しい馬体とは裏腹に、彼が刻んだ航跡は、それまでの常識を根底から覆す破壊的なまでの力強さに満ちていた。外国産馬として日本の地を踏み、開国を迫る使者のように、彼はターフを、そしてダートを震撼させた。

芝で見せた、天才の片鱗

春の東京、NHKマイルカップ。彼は1分33秒0という驚愕の日本レコードで、世代の頂点に立った。その走りは軽やかで、かつ力強く、誰もが「芝の絶対王者」の誕生を確信した。しかし、運命は彼をさらなる高み、あるいは誰も足を踏み入れたことのない未知の領域へと誘う。日本ダービーでの敗北、そして秋の天皇賞除外。絶望とも思える不運が、歴史上類を見ない覚醒の引き金となった。

砂の上に刻まれた、神の領域

急遽矛先を変えた武蔵野ステークス。初めて踏む砂の舞台で、彼は「怪物」へと変貌した。2着を9馬身ちぎり捨てたその時、時計が示したのは1分33秒3。芝のG1勝ちタイムと遜色ない、物理的に不可能なはずの数字だった。続くジャパンカップダート。世界の強豪が並び立つ中、彼はただ一頭、別次元の物理法則の中にいた。直線、唸りを上げるような重戦車の加速。2着に7馬身、1.3秒という絶望的な差をつけてゴールした時、私たちは目撃したのだ。競馬というスポーツの限界を、彼が軽々と超えていく様を。

突然の閉幕、そして永遠へ

その絶頂期、悲劇は訪れた。右前脚の屈腱炎。あまりにも速すぎたスピードは、自らの肉体をも蝕んでしまったのか。ドバイワールドカップで世界を制覇するという夢は、幻となって消えた。通算10戦。彼が駆け抜けた時間は短く、しかしその密度は、他のどの馬よりも濃かった。引退後も彼は種牡馬として、ソダシのような白い奇跡や、カレンチャンのような快速女王を送り出し、日本競馬の血脈を豊かにし続けた。

「彼は一頭だけ違う生き物だった。あんな馬には、もう二度と出会えないかもしれない」
――競馬ファンの独白

クロフネが去った砂の上には、今も彼が残した深い轍が刻まれている。それは、日本競馬が世界へと「開国」した証であり、私たちが夢見た「最強」の具現化であった。芦毛の怪物が残した白い閃光は、これからも私たちの記憶の中で、決して色褪せることなく走り続けるだろう。