日本競馬において、サンデーサイレンスの血を持たないことは「異端」であることを意味するかもしれない。 しかし、サトノクラウンは自らの蹄で、その血統の正しさを証明し続けた。 デビューからの3連勝、そしてクラシックでの挫折。 早熟と思われた天才は、苦難の時を経て、真の強さを手に入れた晩成の王へと変貌を遂げた。
香港で魅せた「世界」の脚
彼のキャリアを語る上で欠かせないのが、2016年の香港ヴァーズだ。 相手は凱旋門賞2着の実績を持つ世界的強豪ハイランドリール。 誰もが「2着争い」を予想する中、サトノクラウンとJ.モレイラだけは勝利を諦めていなかった。 直線、遥か彼方にいた王者の背中を目がけて、彼は矢のように伸びた。 ゴール寸前での逆転劇。それは、日本馬が世界トップクラスの底力を持っていることを知らしめた歴史的瞬間だった。 「メンタルの成熟」――堀調教師の言葉通り、彼は心技体が噛み合った時、手がつけられない強さを発揮した。
雨ニモ負ケズ
そして、国内での悲願達成。2017年の宝塚記念。 降りしきる雨、渋った馬場。多くの馬が苦戦する中、彼にとってそこは独壇場だった。 M.デムーロ騎手に導かれ、力強く馬場を掻き込むその姿は、欧州血統の真骨頂。 最強馬キタサンブラックを完封し、ついに手にした国内G1のタイトル。 続く天皇賞(秋)でのキタサンブラックとの一騎打ちも含め、彼はタフな条件下でこそ輝く、孤高の戦士だった。
次代へ継がれる王冠
2018年のジャパンカップを最後にターフを去ったサトノクラウン。 しかし、彼の物語はそこで終わらなかった。 種牡馬となり、初年度産駒からタスティエーラを輩出。 自身が3着に涙を飲んだ日本ダービーを、息子が見事に制覇したのだ。 父が届かなかった栄光を、その血を受け継ぐ者が掴み取る。 これぞブラッド・スポーツ、競馬のロマンである。
「彼は困難な状況ほど強かった。逆境を跳ね返す力、それが彼の最大の武器だった」
――関係者の回想より
サンデーサイレンス系全盛の時代に、非主流の血統で世界と渡り合ったサトノクラウン。 その重厚な走りと不屈の闘志は、記録以上に記憶に残る名馬として、 これからも長く語り継がれていくことだろう。 その頭上に輝く王冠は、決して錆びることはない。




