スマートで洗練された血統馬たちがターフを席巻する現代において、 メイショウサムソンのような馬は、もう二度と現れないかもしれない。 泥臭く、不器用で、けれど誰よりも負けることを嫌った馬。 彼の走りは、私たちに「血統や値段だけが全てではない」という、シンプルだが力強い真実を教えてくれた。
誰からも期待されなかった始まり
北海道・浦河の小さな牧場で生まれた彼は、決してエリートではなかった。 父は欧州のスタミナ型、母系は日本の在来血統。スピード全盛の時代にあって、そのプロフィールはあまりに古風で重厚だった。 700万円という安値。デビュー戦での敗北。 華やかなスポットライトとは無縁の場所から、彼のキャリアは静かに始まった。 しかし、一戦ごとにその「重さ」は「強さ」へと変わり、無尽蔵のスタミナと類まれな勝負根性が開花していく。
涙の二冠、そして王者の風格へ
2006年、春。皐月賞で見せた脅威の差し返し。 そして迎えた日本ダービー。雨上がりの東京競馬場で、彼は世代の頂点に立った。 鞍上の石橋守騎手は、デビュー22年目にして掴んだ栄光に男泣きした。 「雑草」と笑われた人馬が成し遂げた快挙に、競馬場全体が温かい拍手と感動に包まれた日だった。 その後も彼は止まらなかった。古馬になり、最大の武器である「ド根性」を武器に、天皇賞・春と秋を連覇。 タマモクロス、スペシャルウィーク、テイエムオペラオーに続く史上4頭目の偉業を達成し、名実ともに時代の王者となった。
永遠に語り継がれる「ド根性」
アドマイヤムーン、ウオッカ、ダイワスカーレット。 強力なライバルたちとしのぎを削った激闘の日々。 勝つときも、負けるときも、彼は常に全力だった。 直線で並ばれれば噛みつきそうな闘志を見せ、苦しい展開でも決して諦めない。 その姿は、見る者の心を震わせ、勇気を与え続けた。
「本当に強い馬です。スタートからゴールまで、完璧だった」
――武豊(天皇賞・秋 勝利後インタビューより)
通算27戦9勝。獲得賞金10億円超。 日高の夢を背負い、雑草魂で駆け抜けたメイショウサムソン。 その「重厚な強さ」と「不屈の魂」は、記録よりも記憶に残る名馬として、 いつまでも私たちの胸の中で走り続けている。




